362話【苺視点】正しい
「――いただきます」
そんなこと思って笑いそうになってると、竜の姿になった神宮の口がもっともっと大きくなって、温かい息が顔にかかった。
見た目の割にミントの香り。
これ、流石にまずいかも。
そうやってべー姉もぶっきーもメロリンだって咄嗟に思っちゃった。
でもお母さんたちは冷静に思考すると、そっと呟く。
距離は離れているけど、状況が確認できるのは皆が繋がってるからなのかな?
それともすっごく目がいいのかな?
とにかく……すっごい頼りになる。
『――大丈夫』
『絶対に間に合わせてやる』
ぶっきーはその声を知らないからなのかな、目をパッと見開いた。
でも、驚いたのはぶっきーだけじゃない。
理由は違うけど、私たちも一緒に驚いた。
たって管を通ってとてつもない量の魔力と電気が私の身体に、そしてべー姉の身体にも……凄い速さで行き渡っちゃったんだもん。
ビリビリして、痛気持ちいいくらいだけど、このままじゃすぐ破裂するかもって思えてちょっと怖い。
それでべー姉も同じことを思ったみたいで、少し焦ったようにして、もう叩いちゃうみたいに強くぶっきーに触れた。
そうすると、滞留してた魔力と電気は一気にぶっきーまで流れ始めて、あっという間にそれは終わる。
ビリビリはなくなるし、思いっきり魔力が流れたおかげ?か分かんないけど、鼻や喉の奥にあった引っ掛かりがとれるみたいに全身がスッキリして、戦ったあとよりも調子が良くなる。
これならぶっきーに頼らなくても神宮を倒せちゃうかもしれない。
でも……これの威力が気になる。
頼るというより、興味があるから私は黙ってこれを見守らせてもらお。
「!?」
「やっぱり。そう、その顔が見たかったんだよ。『雷竜豪砲……フルチャで全解放』」
ぶっきーは私たちの存在に、流れてきた力に気付き納得すると、嬉しそうに大きく口を開けてバチバチって音を立て始めた。
反対に神宮は何が起こったのか理解してないみたいでぱちくりぱちくり。
でも、すぐ自分が窮地に立っていることにだけは気付けたみたいでそこから動こうとする素振りは見えた。
ただ……ちょっと遅かったかも。
――ゴウ!!!!!!!!
そんな神宮を待つわけもなく、ぶっきーは送られてきたその全てを口から思いきり吐き出した。
幅は結構広いけど、それは威力が分散されてるわけじゃない。
これが最も凝縮された状態で、高密度の一撃。
見ただけで分かる。
これにちょっと当たっただけで、生き物は全部消える。
ただ吐き出しただけじゃない。
技として、スキルとして昇華されて……どんな強い魔法をぶつけても多分、勝てない。
ぶっきーなのに、本当に凄い。
ちょっとだけかっこいい。それでいて、初めて怖いって感じも……。
「苺ちゃん、それは買い被りすぎ。ぶっきーはどんなに凄くても、なんか残念で怖いとは真反対の奴なんだから。ま、そこがいいところというか……嫌いじゃないんだけどね」
「でも……」
『――これが神の使いによる神話の一撃。俺も『また』語り継がれる1匹になりてえもんだ』
べー姉にちょっとだけ反論しようとした時、ぶっきーの思念が私たちにも届いた。
「うん。べー姉が正しい」




