361話【苺視点】繋ぐ
「――氷翼、大翼!!」
お父さんとお母さんにお礼を言い終わると、それを待っていたみたいにべー姉は全身に冷気を纏わせた。
身体から吹き出る汗や湿気みたいなものまで全部凍らせて……おっきな、おっきな翼がべー姉の両腕を巻き込んで作られる。
「綺麗……」
「ありがとう苺ちゃん。でもね、綺麗なものって、大きな力ってあんまり長くは持たないの。早速飛ぶから身体に掴まって」
「ん、分かった。メロリンも急いで」
メロリンはべー姉の胸辺りにひっつくように。
私はおぶさって飛ぶ準備をする。
ひんやりして気持ちいい。さっきまでの戦いで火照った身体がどんどん冷めていくみたい。
「よし、あとはその力を、魔力を繋ぐパイプを作るだけね。苺ちゃん、ご両親との間に管を……絆をイメージして。これはきっと苺ちゃんにしかできない」
「絆……。それ、難しい。でも、やってみる」
あの時、最後にあった2人の顔、瞳や髪の色、角……そしてその温もり……全部、全部が私たちの家族の繋がり。
その証拠で、管。
一緒にいた時間は短くても、それは太くて……これから長く長くなる、そうさせる!
「対象を、魔力の管を感知……成形」
べー姉がちょっと苦しそうに顔をしかめると、私とお母さんたちの間に真っ白な管が現れた。
冷気が白く立ち上っていてずっと触っていたら手が痛くなっちゃいそうだけど、そんなことない。
多分そうならないのは私がお母さんたちに感じる温もり、それとは違うけどべー姉にも温もりを感じているから。
理屈は分からない。
でも、スキルとか魔法って最初からよく分からなくてなんでもあり。
だからこれも、全然あり得ること。
「ふぅ……。なんとかなったわ。それじゃテイクオクといこうかな!」
「メロリン、全員を気付かれないようにして。ちょっと大変かもだけど」
「きゅぅ!」
――ばさ。
べー姉の翼が大きく羽ばたくと同時に私たちの姿は消えた。
飛び上がって、だんだん小さくなっていくはずのお母さんたちの姿も管も、べー姉たちだって今は見えない。
視線の先に映るのは、汚く大きく口を開ける神宮とふらふらのぶっきー。
これ神宮はぶっきーを食べようとしてる?
「べー姉」
「うん。速度を上げるわ」
危険な状況だって分かるとべー姉の翼はより速く強く羽ばたいてぶっきーのところまで一直線。
寒くて、風が強くて、振動もすごい。
ほっぺがぶるぶる揺れて、乗り物みたいでちょっと面白い。
「――着いた、タッチ」
そんな勢いのまま私はべー姉におぶさりながらぶっきーに触れた。
すると、べー姉がぶっきーと契約を結んでるからなのかな?
頭の中に気持ちいいくらい、すうっ……てぶっきーの考えてることが流れて入ってきた。
それで……やっぱりとっておきはあるみたい。
魔力は必要だけど、それはこの管がお母さんたちとの繋がりがあれば……。
『なら、これで大丈夫なはず』
『うん。多分ちゃんと繋がってる。こっちにも声聞こえたから』
安心させたいって思いもあって、私はそう声をかけた。
でもそれを聞いたぶっきーは安心とはかけはなれた様子の顔で、こんな時でもまたちょっと面白いと思っちゃった。




