360話【苺視点】家族
「分かったけど……。苺ちゃん、このまま攻撃を仕掛ければ最悪返り討ちにあうと思わない? 専用のスキルとかもほとんどなくて、有利な上をとられているわけだから。それに……あの姿になった神宮を1回で撃ち落とせる自身が、私にはない」
「べー姉の言うことも分かる。あれからはぶっきーよりも大きな力、魔力を感じる。多分だけど、さっきの雷と同じようなのが、数回撃てる。もしかすると、それ以上のも使ってくるかもしれない」
上空にいる神宮を見て、その強さを推し量る。
腕は細くて身体も大きくはない。
だけど、あのぶっきーと戦って……しかも今の雷を受けたはずなのに、大した怪我はない。
すぐにぶっきーを殴り飛ばしたりせず、何か観察するように近くを飛び回るのはそれだけ余裕があるから。
無理してるところもあるかもしれないけど……慎二兄なんかよりもよっぽど品が良くて、それが凄く怖い。
「あれを倒すにはさっきの雷よりも強力な、予想を大きく越える一撃……それで、びっくりするところから攻撃するしかないと思う。不意打ちして、それでも生きてたらあとは頑張って殴る。下に落ちちゃえばそれも結構自身ある」
「私も、苺ちゃんほどじゃないけど純粋な殴りあいなら神宮って人に遅れはとらないと思う。今のポチ、ぶっきー、この期間で強者との肉弾戦は慣れたつもりだから。さっきのやらしい戦い方のやつで潰された面子を取り返してやりたい。……それで問題なのはその一撃をどうするか、ね」
戦いに対する意欲を見せるべー姉はそっとお母さんとお父さんを見た。
こんなに荒々しいべー姉を見るのは初めて。
あの、慎二兄との戦いが思った以上にフラストレーションになっちゃってるみたい。
顔がこれでもかってくらい怖くて、お母さんたちもちょっと困った感じ……ううん、あれは考えてるのかな?
手を顎に当てて……今はお母さんというよりもお父さんっぽく見える。
1つの身体に2人の意識があるって不便そうだけど、ずっともっと沢山の意識と混ざってたからなのかな、あんまりそれが苦になっているように見えない。
でもきっと戻りたいって思ってる。
……私もそうしたい。
いつかきっと……種がもっと良くなれば、地上に出ればそんなこともできるようになるのかな?
「――あれは……雷竜にはまだ切り札があるように思える。ただそれを使うための魔力が不足している、といった感じに見える。それがどのくらいのものなのかは分からないけど、頼ってみてはどうかしら。どうかな?」
「苺ちゃんのお父様お母様、それはなんとなく感じていたけど、ここからどうやってぶっきーに魔力を渡せば……。それにできたとしても、ばれちゃ……」
「きゅぅ!」
お母さんたちの意見に質問を投げ掛けるべー姉。
するとそれを聞いていたメロリンが自信満々に鳴いた。
確かにメロリンの力なら神宮相手でも気付かれないと思う。
そうなればあとは……。
「うん。分かった。この角は大量の魔力を集め流せる。ダンジョン全体に巡らせられたこれから一気にそれを吸い出すこともできる。だから私はそれを請け負うわ。請け負うとしよう。だから苺たちは接触を」
「ありがとう、お父さんお母さん」
チラッとお母さんたちを見ると、念話したわけでもないのに私の考えてることを理解してくれた。
随分あってなかったし、一緒にいた時間も短いけど……不思議。
みやとはまた違う感じ……これも、この繋がり方も家族なんだ。




