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349話【山吹視点】活路

「と、止まるな。届け……届けえええええええええ!!」

「届きはするよ。というかそれくらいの威力はないと困るから。でも致命傷じゃあない。はは、だからって痛くないわけでもなさそうだけど」



 神宮が放った石ころ、それがスキルを発動させていた手の力みが緩むと迸ろうとした閃光が途端に消えた。


 しかも磁力まで弱まって、宙に浮いていた身体は神宮を目指しながら地面へ沈もうとする。


 必死に翼をはためかせ、勢いを保とうとするがそれも限界。


 俺はの頭は情けない威力で、仕掛けもないもない状態で神宮に衝突した。



 ――ぽた。



 反撃を恐れたのか、勝手に閉じた瞼。


 そしてそれを補うかのように、聴覚が研ぎ澄まされて……俺の耳には少量の液体が落ちる音が微かにだが聞こえた。



「まさか……やった?」



 思いがけない手応えに俺はゆっくりと目を開ける。


 腕も脚も地面にドスンと落ちて、他の竜には見せられない自分の姿、今までだったらそれを確かめるためにすぐに振り返っていた。


 だけどそれはできなかった。


 なぜならその液体が血だということに気付いたから、絶好の機会を逃がさまいと思ったから、神宮の表情がやけに嬉しそうだったから、突進によって受け止めた神宮の手を貫いた俺の角が……ピクリとも動かせなかったから。


 額から汗が吹き出す。


 俺が……完全に力負けしている?

 そんな、さっきまではそんなことなかったじゃねえか。



「う、おおお――」

「自分の身体の異変に狼狽えながらも攻撃の姿勢を忘れない。竜っていう種族はあなたみたいな存在でも誇り高くて、かっこいいって思う。……だけど無駄。わざわざ俺が角を、こうして痛みを負ってまで捕まえたのには当然理由があるんだよ」



 全力で頭を、身体を動かすためにあげた声は神宮の冷静な語りによってかき消され、俺は無駄な抵抗をやめた。


 頭に血が上っている。


 これじゃあ、相手の真意に隙に気付けない。

 勝つには……こんな時でも観察して活路を探すために思考を深めないといけない。


 並木遥に聞いた強くなるためにしたこと、それは格上相手に挑み……測った。

 俺にはそんなの性に合わないやり方だと思ったが……すがってみるか。



「こうして根本に近いところから強く押し込むことで、表面だけじゃなく、その神経、脳にまで微量だろうけど抑制力を与えてやれる。操るまではいかなくても、竜っていう種族にはこれが有効。……ふふ、人の力では無理だったけどやっぱりこの姿なら何ら問題ないね」



 神宮は未だ楽しそうに俺の角をその血まみれ手で押し込む。


 その様子でも警戒が解かれているわけじゃなく、反対の手は空けた状態。

とはいえ自分優勢という状況のお陰か、対面してから今が一番気の緩みを強く感じる。


 つけ入るにはこれを利用するしかねえか。


 あー、このやり方は流石にしんどそうだな。

 だが危ねえ橋を渡るのは胸が高鳴りやがる。



「そしてこれを右に回すと……」

「い゛っ!」

「あはははははははは!! やっぱりリンドヴルムト同じだ! 痛いだろ! 情けない声が出ちゃうくらいさ!」

「あがっ……うああああ!」



 痛え、確かに痛え。

 だが耐えられる。



 ……だから今は大袈裟に、神宮が喜ぶように演じてやろうじゃねえか。

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