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346話【山吹視点】強く早く

「思っただけ? 神宮……まさかお前が思ったこと全てが叶う、そんなあり得ねえ話を信じろと? はっ! 人間は、地上の人間はいつから神様になったのかねえ!」

「うーん……。俺はともかく、上の奴ら……政治家の中でも声がデカい連中は自分の事を神様だと思っているかもね」

「お前以上にきな臭くて、気味の悪い連中がごまんといるか……。俺たちの神があんだけむきになって階層の取り合いをさせたのがなんとなく分かったぜ。だってよ、そんな奴らできる限りの強さ……いや圧倒的な力で蹂躙してえもんよ!」

「蹂躙自体を楽しむのが君たちで、蹂躙により恐怖を楽しむのが俺たちの多く……。確かに、神様だなんだって揶揄されても仕方ないね。でも、俺のスキルは本当にそんな大層なもんじゃないんだよ。本当に……他人にそう信じ込ませる、誰にとっても神様みたいな存在と思っていただける力だったなら良かったのに……。だからかな……俺や俺の親は洗脳だとか魅了だとかその類いのスキルが好きなのかもしれない」



 神宮の野郎は態度や口調に似合わず、どことなく寂しげな雰囲気を醸し出して俯く。


 別に意図してやってるわけじゃあないんだと思うが、このいい男風な……アンニュイな感じが鼻につくぜ。


 というか、恐怖を楽しむって……反吐が出るな。



「全くもって合わねえな、そんなスキル俺は好きじゃねえ。なんというか、真っ直ぐじゃないからよ」

「そうかい。俺は自分のがこんなに真っ直ぐなスキルでうんざりなんだが……」

「真っ直ぐ? お前が? それはどんな冗談……だよっ!!」



 もう1回この隙を突いて、今度は小細工なしで殴りかかる。

 結局こいつの障壁で吹っ飛ばされるって言うんなら、決め時以外『黒雷重槌』を使うのは効率的じゃねえ。



 だから小細工はなし……拳にはな!



「ん!? 速い……止まらない、か。これはこれは……でかい上にこれじゃ全部受けなきゃだな。しかも……範囲が広いから受け流すのも難しくて、ダメージは残る」

「痛みはあるってわけね。ただ、それでも余裕そうに解説してくれたんじゃ萎えそうになるぜ。そう、余裕ならよ」



 右、左と突き出すこの拳をより速くするために利用してるのは反発力。


 肘や肩に電気を貯めて、階層全体に張り巡らせた回路と瞬間的に強く反発させるって仕組みなわけだが……これはまだまだ強くなる余力がある。


 それにこのスタイルに慣れていくってこともあって1発目、2発目……打ち込めば打ち込むほど、殴り合えば殴り合うほど強くなる。



「――ん、ぐ……」

「お前は思っただけで強くなれるらしいが、俺はより早く強くなってやるよ」



 ようやく神宮の険しい顔が見え出した。

 地味なやり取りに落ち着いちまったが、このまま押しきって――



「さっきも言ったけど、俺は人やモンスターを自由に操れない、できても本当に些細なものしかできない才能がない」

「押されて弱気になってるってか? そんなので手を抜いてやるとでも――」

「だけど想像することと、自分を【誤解】させ、騙してやるのは大の得意なんだ。君のそれくらいは簡単に越えられる。……それがどれだけのものか、分かりやすく見せてあげよう。そうだな……竜の姿なんかが丁度いいかも!」

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