34話(他キャラ視点エピソード) な、んで?
「――『水弾』! 『水弾』! 今のうちに腹を!」
「分かってる!」
オロチの尻尾攻撃を魔法で弾いてくれているうちに、私はオロチの懐に潜り込んで剣を振るう。
鱗が硬いせいで、なかなか傷には直結してくれないけど、それでも刃が当たることで打撃ダメージはあるみたいで、その度にオロチの顔が歪む。
私の攻撃が効いたことで、女性の水魔法も援護から明確なダメージソースに変わり、完全に流れはこちらのもの。
オロチの攻撃スピードが大したことがないっていうのもあるけれど、女性の水弾……あれの連射、それに当てる場所、精度が高いお陰で今までにないくらい戦いやすい。
初級魔法しか使えないみたいだけど、女性の実力は本物。
本当に何者なのかしら?
「が、あ……」
「魔法!? これは避けれない――」
「大丈夫! 逆にこれはチャンスよ!」
「え?」
オロチの周りに展開された複数の魔法陣。
私たちの攻撃に鬱陶しさを感じたのか、一気に片をつけるため大技を放とうとするオロチ。
その展開された魔法陣の位置から、自傷ダメージは覚悟の上といった様子。
流石に距離をとらないとまずいと思い、重心を後ろに寄せる。
するとそんな魔法陣が1つ、まるでガラスが割れるように消えた。
どうやら、女性の放った魔法がオロチの魔法を打ち消したみたい。
お陰で生じた大きな隙。
私は剣を血が出そうな程強く握りしめ、ありったけを込める。
「『羅刹剣』」
身体から血の気が引いていく感覚。
唐突に現れ始める切り傷。
この身を一瞬捧げることで、私は私を遥かに越える一撃を授かれる。
身体強化、超身体強化とはまた違う、比較にならないほど強力な強化。
これでその鱗が切り裂けないと言うなら、もし腹の中の人が生きていて、女性が言うような強者だったとしても敗北必至。
それくらいこの一撃に、私は自信がある。
「あああぁぁあぁああぁあっ!!」
オロチの身体に剣が触れ、私の身体は一層激しく傷つく。
痛みと、絶対切り裂くという思いから、自然と大きな声が漏れる。
「硬い、でも、あと少し……」
鱗の割れる音が鳴り始め、遂に肉を切り裂く感触が手に伝わる。
でも表面を切り裂いたところで、私が負ったダメージ分の元は取れない。
深く。もっともっと深く――
「あ、がっ……。う、そ……」
スキルによる痛みじゃない。
これはオロチの攻撃によるもの。
しかも……この個体のものじゃない。
見れば、いつの間にか女性はその場に倒れ、他のオロチが私の周りを囲んでいた。
「あんただけは……あと、ちょっとだったのにな」
そう言いながら、自分を負かしたオロチの顔を見る。
だが、その顔は勝者の顔というにはどこか辛そうな――
「『水弾』」
その時、まだ息があったのか。
女性の魔法が私の横を通りすぎ、オロチの腹にできた傷に命中。
その傷からは血が吹き出し、そして同時に……
「え?なん、で?」
私の知っている人間がそこから顔を覗かせたのだった。
お読みいただきありがとうございます。
モチベーション維持のためブクマ、評価よろしくお願いします。




