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338話 決殺

砕けた雰囲気が一変。


 まるで冷気のように発せられる殺気で俺の目は見開いた。


 どうも最近は仲間を作ることに躍起になっていたからか、甘い考えがちらついてしまってた。


 でも、おかげでまた沸き上がった。

 どんな形になろうとスキルイーターという因縁の敵を殺したい、その感情が。


 いや、むしろさっきよりも熱い。

 なぜなら今度は持っている全てを、成長をお見舞いしてやれるかもしれないから。


 あの日守られるだけだった自分自身と、改めて盛大に決別してやれるから。



「詳しいその……スキル?だとか俺の素性だとか、話せば切りはねえが……それを話してやれるのはお前が俺に殺されなかったときだけ、ってな」

「お互いに生きていないといけない……。そっか、だとすると難しいのかもしれない」

「どうした?俺の気にあてられて臆したか?へ、賢明だと思うがな――」

「いいや、本気で戦ってお前を生かしておくのが難しいと思ってさ」

「へぇ、傲慢……じゃなくて、確信があるって感じか。いいねぇ、そういう手合ほどいざって時いい顔をするもんだ。思ってたのと違う!計算が合わない!とか言いながら。そうなりゃ俺も気分がいいし、主さんも満足するだろうぜ」

「趣味が悪いな。だけどその気持ち分からなくもない。俺も分からせるってことにまだまだ浸りたい、そんな悪性がある。というか今だって湧いて、ふつふつと滾ってるからさ」

「……。そうか、案外気は合うのか。でもこの刃は合わせらんないぜ」



 ふっと息を吐く大国護。


 そして半歩だけ前にすり出て、薙刀で突く。

風切り音はほぼなく、とはいえ遅いわけじゃない。


 だからだろうか、攻撃の威力や間合い到達までの時間が読みにくい。


 ここは大袈裟でも大きく避けて様子を見るのが吉か?

 いや……向こうの刃がさっきみたいに空間を歪ませるのだとしたら、受け止めてやったほうがリスクは低い。


 見えるところで捉えられるのなら、それに越したことはないだろう。



「人柄からして、やっぱりそうなるよなぁ」

「うっ!?」



 受け止めようとする寸前、薙刀は加速。


 刀の腹で受け流そうと前に構えるが、薙刀はまるでゴムのようにグニャリと曲がった……そう見えた。


 そして下方向に落ちたかと思えば、今度は俺の顔を目指して切り上ってくる。


 これだけの手数を一瞬にして、それも何か話している様子も見せてとは、驚きが隠せない。

 思わず声が出てしまうほどだ。


 武器の扱い、その練度はスキルイーターのそれを遥かに越え、俺よりも、陽葵さんでさえ驚くレベルに達したいるだろう。


 となれば大国護の次手は……。



「ここか?」

「ほう」



 俺は顔面に向かって矛先を無視してそれよりも少し下まで腕を伸ばした。


 極限まで音は絞られ、視線もほとんど眼前の刃に集中させられていたが、どうやらなんとかなったようだ。


 反射力の強化が活きた、か。



 ――ぽた。



「やれやれ奥の手は一撃決殺でないといけない、そういう教えだったんだけどな。そんだけの切り傷で終いとは……割に合わん」



 困ったようにそう言う大国護は、それでもなお薙刀に力を込める。


 そのせいで直前空間を歪ませ、途端に元の位置に戻った刃、それを捕まえた片手からじくじくと血が湧く。



 こいつ、今までの敵とはまるで違う。

 違うが……竜並み、いやそれ以上に手強い。

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