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336話 混在する何か

「いや、痛く……ない。なんで、何も……」

「……」

「ひっ……」



 スキルイーターの顔に俺は自分の顔を近づかせる。


 攻撃されるリスクはあったが、それ以上にスキルイーターは恐怖を覗かせることのほうが早く、隙だらけ。


 別に致命傷を与えたわけではないけど、勝負は決したかな。


 あれだけ怖くて、動けなくて……圧倒的だったこいつが今は小動物のようだよ。

 カタコトの日本語もなりを潜めて……情けない。



「終わりだ」



 清々しさと虚しさを感じつつ、俺は刀を振り下ろす。


 折角こしらえた自慢の一刀だったっていうのに、本領が発揮できなかったのは残念な気がしなくもないけど、これでいい……んだよな?



『――く、ひひ……もっと楽しませろ。その顔が歪むところをもっと、もっとよく見せろ。そのために私は……10等品とはいえ、宝物を荒らすことを見過ごしてやったのだぞ』



「う゛!?」



 刀がスキルイーターの胴体をかっ切ろうとした時、スキルイーターの驚嘆とは別に声が鳴った。


 音質は悪くノイズも混じっているが、確かに人の声。


 あまりにも唐突なそれに驚き、振り下ろす腕からは勢いがなくなってしまう。


 そのせいで絶命を狙った一撃はスキルイーターの身体を2つに割ることはなく、肩から胸の上の部分までで止まってしまった。



「……神測」



 普通のモンスターや人であれば殺せていたけど……こいつの場合は再生力でおそらく戻ってしまう。


 現に止まっている箇所、刀が触れている肉の部分はぼこぼこと蠢き、スキルイーターもアワアワとしながらも足を、腕をゆっくりと後退させている。


 核であろう心臓、それが外れていればそのままバラしてしまおうという腹積もりだけど……急所を洗い出して、何か起きる前に殺らないと。


 嫌な予感がする。


 なんどきようにできるだけ魔力をセーブなんて考えて、一応神測も控えてはいたが、もうその段階ではないのかもしれない。



『――敵再生情報の取得……完了。核の位置下腹部、臍より2センチ下に確認。補完……核を視認――』



 急ぎ発動した神測は俺の気持ちを察するようにすぐさま結果を知らせてくれた、だがそれは途中で止まりそのままノイズとともに消えてしまった。



 これは……。



「つまり、結果が変わった?異常……なら、それもまとめて叩き斬る!気――」



 ――すっ。



 柔らかな感触とともに刀はスキルイーターの身体から外された。


 あまりにも流麗で、素早いその手捌きからスキルイーターがスキルイーターではなくなったと容易に判断できた。



「――この俺に刃を向けるってのがどういうことか……いや、その様子だと分かってはいな――。……。……。おっと、すまん。思いの外、主さんの……元の人格は暴れん坊らしい」



 スキルイーターの身体に一瞬靄がかかり、あっという間に晴れた。


 そして、その中から顔を出したのは細身の、どことなく気の抜けた中年男性。


 入れ替わった……訳じゃない。


 上半身はほとんど人のもの、肌の色だったが、その爪、下半身はスキルイーターのまま。


 変わった、あの声をきっかけに。



「俺は――。……。……。……。俺が主!俺は、俺が、今度は支配する側に!」



 自己紹介でもしようとしたのか、スキルイーターだったそれは構えを解き、俺に視線を向けた。


 だが、途端にその顔には別の顔が混じり意識を奪おうとする。


 人格が混在しているのか、まぁスキルイーターの構造から考えて不思議ではない。


 ……にしてもこっちは誰かに似た顔――



 ――ぶしゅっ!!



 思考を巡らせながら観察を始めようとしたその時、唐突に血飛沫が舞った。


 それはあまりにも鮮やかな赤だった。

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