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333話 蜜柑色

「これ、やり過ぎると自傷行為に慣れそうで怖いな。でも、レベルが上がれば上がるほど素材になる俺の肉の価値が高まって、業物になるからどうも止められない」

「お前、マサカわざと斬らセたノか?」

「ああ、やっと気付いたか。どうやら登った血が降りて冷静になったみたいだな」

「狂人……。化物が!」

「それ、お前が言うのかよ」



 俺は声を荒げるスキルイーターを笑いながら自分の腕を拾い上げるとそれに意識を集中させる。


 自分の肉体ということもあってか、その形はかなり自由に変化させることが可能。


 これはこれまでに何度か試したことで分かっている。


 勿論今回とは違い軽度な自傷行為であることがほとんどだったけど、その度にハチや陽葵さんに怒られて……。


 ま、まぁそのお陰でこんな時に迷う必要はないから……。



「――成形、着色……耀刀柑十文字」



 漆黒の刀身に蜜柑色の波が紋様として浮かぶ。


 鍔はきっちりとした十文字型で柄と同じ黒色。


 耀なんて文字とは反対に黒が多い一振だが、その分蜜柑色が映える。



「ナニが出てくるカト思えば……地味ナ剣だな」

「そうか? 俺にはこれ以上ないデザインだと思うけど。それに……」



 俺は自分が生み出し、スキルイーターを拘束させていた無数の剣とその腕目掛けて刀を振る。


 それはスキルは勿論、技と言えるものでもなくただただ振っただけ。


 子供のお遊び程度でしかないお粗末な一振。



「――ぐ、あああああっ」

「うん。我ながらいい出来みたいだ」



 それでも刀はスキルイーターの腕を、引っ掛かることなく一断した。

 しかも、他の剣を豆腐のように切り裂きながら。



「ハァハァ……。イイダロう、それは確カニ業物だ。だが、コの薙刀ホドかドウカ……それはマダ分からナイっ!」



 片腕で薙刀をなんとか制御するスキルイーター。


 どうやら俺が剣を切り裂いたことで、拘束力が弱まって他の剣をなんとか払い除けれられたらしい。


 とはいえ、俺が繰り出した遊びよりもお粗末な攻撃じゃ捉えられることなんてないけど。


 これだけのダメージで、敵はグロッキー。

 もう拘束する手間も要らないだろう――



 ――にょん。



 薙刀を振る音にしてはやけに軽快で、粘っこい音が耳に張り付いた。


 不思議だが、なんだか聞き覚えのある音……。



「まさか――」



 俺は咄嗟に身を屈めた。


 すると、まだ攻撃範囲に入っていないはずなのに俺の頭上を刃が通過。


 そしてそれは姿を消す。



「ちっ。カワシタか……」

「移動スキル……。しかも局所的な」

「そう、コレはスキル。スキルにシタモノ。過去の使い手ガ誰ニモ見えなイ速度の攻撃ヲ目指シ、その努力ニヨッテ……この薙刀ハ空間を飛ンダ。一撃必殺ノ技術とそれを可能ニスル武器。その2つが生ンダ奇跡……と、されていル」

「されている?」



 スキルイーターの顔が得意気なものに変わっていく。


 待ってましたと、言わんばかり……か。

 向こうのペースに乗せられているって思うと、ちょっとだけイラつくな。



「そう。俺ハ不明確なモノ、ダケドそう信じて仕方ない、マタ、それまでの努力ガ積み重なったモノをスキルにして食エル。ヨッテ、昔ノ武器ハスキルの宝庫ッテワケだ。……別物ナンダヨ、進化した俺ハ」

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