33話(他キャラ視点エピソード) 腹係
「――あなた、どうして逃げていないのよ……」
「助けてって言ったけど、死んで欲しいなんて言ってないから。だから怖いけど、逃げたいけど、私ももう1回戦うわ……『水弾』」
震えながら放たれる初級魔法。
でもその威力は、私が知っているものよりも強力。
お陰で私の身体に噛みつこうとしていたオロチたちは、1度私たちから距離をとった。
怪しい女性ではあるけれど、私を救ってくれたことには変わりない。
悪い人ではないと分かったことだし、ここは共闘して――
「わ、私たちも戦います!慎二様のためにも!」
「あなたたち……。分かったわ。でも無理だけはしないで」
結局、慎二と状況報告の役割を担っている人以外全員での共闘。
皆の真剣な顔つき、これはもう帰れなんて言葉は言えないわね。
「その、あの、えっと戦ってもらえるのはありがたいんだけど、このままだと勝率は0に近い。そこでなんだけど、あいつ、オロチたちの中に私の仲間を飲んだやつがいて……。私を庇って飲まれただけで元々は私たちが優勢だった。だからその仲間がいればきっと――」
「でもその人、もう飲まれてしまったんでしょ?酷なこと言うけど死んで――」
「生きてる。私が魔法で作った剣を『彼』に譲渡したんだけど、それがまだ消えていない。普通魔力の供給元が失くなれば剣は消えるはずなのに。多分1番多くの魔力を感じるあいつの腹に、『彼』はいる」
力強く私の話を遮って、女性は1匹のオロチを指差した。
魔力を感じるなんていう、スキルも魔法も持っていないけど、言われれば確かに他の個体よりもお腹が大きいような……。
「オロチの皮膚は硬い。でも、腹にダメージを与え続けてればきっと『彼』を吐き出してくれるわ。お願い、協力して」
「……でもね――」
「私、協力します!大好きな男性を助けたいっていう思いは尊重すべきです!」
「わ、私もそう思います」
「私も」
飲まれてもなお、生きていると信じる女性を私なりに納得させてあげようとすると、今度はチーム慎二の面々が声を大にして、協力表明を始めた。
この流れで私だけ断るなんてもうできないわね。
「はぁ。分かったわ。じゃああいつの腹に攻撃できるように、まず私が2匹請け負――」
「流石に向こうも痺れを切らしたみたい。私とこっちの女性で腹を叩くから、あとはお願いできるかしら?」
「分かったわ! 行くわよ皆! 自己強化スキルと防御系魔法が使える人は、前衛のサポート。前衛は無理に突っ込まず、2人の状況を見つつ、ヒットアンドウェイでオロチたちの気を引くの!」
か、勝手に役割を決められちゃった。
確かにこの中じゃ私が1番攻撃力が高いだろうけど……。
「お、おいお前たち! 必死で戦えよ! 場合によっては俺も必死の覚悟でサポートするからな!」
「え!? なんでまだそんなところにいるんですか、慎二様」
「状況報告メモ、チームリーダー。逃走はせず勇敢に居残る(ただ、腰を抜かして動けなくなっただけ)っと」
状況報告役の女性も慎二もあそこにいるとなると……。
これも魅了の効果かしら、やってやろうって、気持ちが昂ってきたわ。
不本意だけど、魅了はバフとして必要で……慎二がいてくれて良かったって思えちゃってる。
お読みいただきありがとうございます。
モチベーション維持のためブクマ、評価よろしくお願いします。




