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328話 京極一家と宮平一族

「京極さん……いつの間に、というか協会はいいんですか? 京極さんにはしばらく映像機器を使って各陣営の指揮をとってもらって、協会の守りも――」

「リンドヴルムの出現に合わせてみんなが代わってくれたんです。特に先輩たちが、『お前は後輩のくせに全部背負い込もうとしすぎだ。1人2人休んだくらいで機能しなくなるような胆力のないチームを作ってきたつもりはないよ』って。……そうですよね。今思えば私みたいな小娘がいっちょ前に仕切ろうって、私がいないと駄目なんだって、そう思いすぎていたみたいです」



 京極さんは苦笑いを浮かべつつ、その額に汗を滲ませる。



 あの日の一件、脱獄者に対してあまりにも弱かったこと、矢沢という人間に支配されていたこと、これらが露見してしまったから探索者協会に対する信頼というのは世間的にも俺個人としても知らず知らずの内に落ちてしまっていた。


 だけど同じ仲間と共に業務に明け暮れる日々、その積み重ねが消えていたわけでは当然なく、むしろこれをきっかけに探索者協会はより良い会社、チームとして再始動できているらしい。


 次期会長として京極さんを押そうとも思っていたけど、それよりもまずその先輩含め探索者協会の職員のことをもっと知っておくべきなのだろう。


 今後地上に出ていくとなって外でも拠点を構えたいとも思った場合には、よりリーダーシップがあり、ダンジョン街の内政に詳しい人で、もう何人か矢面に立ってくれればとも思うし……。



「――って、そ、そんな話をしてる場合じゃないですよね。遥さん、あの竜……リンドヴルムを、お母さんを私たちはごと空いているところに割り振ってください」



 今までの自分を思い返してか、少し照れた様子も見せていた京極さんは慌てて話を変え、その表情も堅くした。



「……母親と戦うのは辛くないですか?」

「多分私が一番お母さんの癖を把握していて、操られていてもそれは隠せないと思うんです。だから私以上に適任はいないと思います」



 俺の言葉を決して否定はしないが、その瞳にはいつもの穏やかさが感じられないほどの決意に満ちた力強さを感じた。


 となればこれ以上はあれこれ聞くのは不粋か。



「分かりました。京極さんとみなさん――」

「あ、そこには俺も振り分けて欲しいな。一族みんな集まったとなれば、俺も行かないと」

「了解です。じゃあ京極さん、宮平さん、それとその一族のみなさん……あと30秒ほど耐えてください」



 俺の言葉を聞いて全員がいっそう力を込める。


 すると防御壁は厚く強固になり、リンドヴルムの顔を歪ませ、それに乗るスキルイーターは苛立ちを露にする。


 荒れ狂う鞭と手綱。

 ……。もしかすると、リンドヴルムの操作はスキルイーター自身というよりも……。



「――やっぱり。みなさん!飛ばす前に一つ言っておきます!あの鞍、手綱を外してください!そうすればリンドヴルムは今ほどの敵意を剥き出すことはしないはずです!」

「……なるほど。それなら、思ったよりも楽な仕事になりそう……かな?」

「情報の提供ありがとうございます、遥さん。……お母さん……必ず解放してあげるからね」



「この、こウなれバ――」



 焦ったスキルイーターがついに自ら防御壁を壊すために鞍から飛び降りた。


 しかしその判断はあまりにも遅すぎた。



「な!?」

「リンドヴルムは割り振り消えて、お仲間も大分減った。疲れてはいるけど……これでやっとお楽しみの時間ってわけだ」



 京極さんたちを指定の場所に割り振ると、俺は身体をよろめきながらも魔法陣を展開。


 今度こそ先手をとられたり、隙を突かれないよう、残った探索者たちを先導するよう意味も込めて攻撃の準備をしつつ……口角を上げながらスキルイーターに視線を送った。

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