表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

323/424

323話 トサカ

『――あ、れ……危、険。が、が、あぁあああああああああああ!!』

『あーあ。他所で手に入れたモンスター、その配合を多くさせたおかげでステータスとか筋力とかはある程度補えたけど……その分頭が回んないか』



 呆れながらも、神宮は暴走を始めた新手のスキルイーターたちを止めはしない。


 人の言葉を発してるってことは従来のスキルイーターよりも貴重なはずなんだけどな。



 何か大量に作る方法でも編み出したのか?

 或いはそれが湧くようにしたとか……ともあれ、何かしらの仕掛けがなければこんなに雑に扱うとは思えない。



 この期間で一体何が……。



『――パリリ』



 頭を悩ませる神宮を注視しながら思考を巡らせていると、スキルイーターの爪がひびの間に入り、高めの……何かが割れるような、砕けるような音が鳴った。


 例えるならポテトチップスの1口目のような爽快感のある音だ。



 今度のスキルイーターは顔がもろに猫科の生き物のそれ。


 ライオンとか虎とか……まぁそこまでは派手ではないものの、動物らしさ全開で、爪はキラキラと光に照らされている様子からしてかなり硬そう。


 これ、まともに戦う前から大ダメージって可能性もあるか?



『……あれ?もしかして思い違いだった?その力絶対手に入れて……風竜だけじゃ不完全だった、あの研究所のダンジョン化、私物化を進めたかったんだけどなぁ。おーい、さっきまでの自信はどうしたんだよ――』




『――小神の御業:万雷黒創世』




 ひびの中に入れたスキルイーターの爪がグリグリと中をいじっていると、肩を落としながら神宮は一歩、また一歩と山吹に近づいていたのだが……その低く荘厳な一声にピタリと足を止めた。


 そしてその口角をこれでもかと上げると、ポッケからスマホを取り出す。


 誰かと連絡をとるつもりらしいが……考えられるのは、あの人くらいか。



『あー、もしもし。そっちで移動路を広げなくても大丈夫になった。というかむしろそれするとまずい。……ああ。かなり面白いイレギュラーが起きてさ、そっちはそっちで、こっちのことは気にしないでいいから。うんうん、それにこっちは地上がすぐだからなんとでもなる、なんとでもしてくるって。じゃ、またあと――』




『――バンッ!!』




 1階層の天井を厚く黒い雷雲が覆い、視界が暗くなる。

 それから約10秒ほど、ゴロゴロと鳴り始めたかと思えば、神宮を中心に一筋の黒い極光が数本落ちた。


 さらに苺の両親のスキルまで無効にするその雷は、地面に落ちた後も跳ねて跳ねて跳ねて、1階層を回遊。


 触れたものは勿論、側にいただけのスキルイーターすら1秒とかからずに炭へ変える。


 岩や草花さえも消え、凹凸も許さない。

 1階層は次第に平なだけの不毛の地となる。


 だが、それでも生き残っている存在、敵はいた。


 だからようやく光の玉から姿を現したそいつは気だるそうに辺りを見回して、トサカにも似た無駄に大きい一本角をくしを入れるようにして撫でる。


 それだけで欠けたその角は治り、ついでにマントのような、というか不良の学ランのように羽織ったそれを翻しはためかせる……というか、それが翼か?


 どっしりとした両足と鱗が刺々しいその腕は竜らしさを感じさせてくれるが、腕組みして佇む様子がどうしても今までの竜と比べてモンスターらしさに欠ける。



「これも人として生きてきたからなのかね?」

「確かに面白い容姿です。しかも実力は今までの竜以上。できれば神宮さんは出し惜しみしたかったんですけどね……仕方がない、か」



 渋く低い声。

 どこからともなく聞き慣れた、でも懐かしいその声のせいで俺の額から一筋の汗が流れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ