表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/245

32話(他キャラ視点エピソード) 死の覚悟

「あの女性は一体……。でもさっきの悲鳴……。人の言葉を使っていた……。一応人間っていう区分でいい、のよね? でも万が一敵だったら――」

「『重力枷(グラビティパニッシュ)』! おい! お前ら何もたもたしてるんだ!早くあの女性を助けろ!」


 率先して最上級魔法を放ち近寄って行った慎二だが、オロチに睨まれ、さっと後方へ。

 オロチに魔法は効いているようだけど、他のモンスターと比べて効果が薄い。


 きっと魔法防御力が高いからだとは思うけど……。

 それでも圧倒的な強さを誇ると思っていただけに、少しでも効いているっていうのは意外だった。


 もしかすると食い止めるだけじゃなくて、撤退に追い込むことも可能かもしれないわね。


「分かりました! 皆、相手の攻撃範囲は広いけど、本体のスピードはそこまでじゃないはずよ。下手に距離を取らずに接近して翻弄してやりましょう」


 私の合図にコクりと返してくれる魅了(チャーム)済みの女の子たち。

 私よりもスキルによる効果が大きいのか、もう自分の意識はないようにも思えたけど、ちゃんと私の 声は聞こえているみたい。


 むしろ魅了(チャーム)のお陰で怖いものなしで突っ込んでいく様子も見られるから……本当に万が一があるかも――


「不用意に近づいちゃ駄目っ! こいつ以外にもまだいるの!」

「え?」


 怯えた人間に近い姿の女性は、近づく私たちに気付くと焦った声で思いがけない言葉を口に出した。


 その瞬間、まるで獲物がかかったと言わんばかりにオロチの口角は上がり、地響きが聞こえ始めた。


 大きな揺れ、隆起する地面、柱のように湧き上がる水。

 その柱は全部で6つ。

 どれからも殺気が漏れ、その中にモンスターがいることが分かる。


 万が一、か……。

 訂正。そんなものこれっぽっちもなかったみたい。


 他の女の子たちは、驚いて足が止まっていて危険。

 それに慎二の命令。

 私の場合、絶望よりも、皆のために戦わないといけなっていう意思の方が勝ったみたい。


「慎二様! それにチームの皆! そこの人! 急いでここから逃げて! 一瞬だけど私が気を引くから……『誘惑の居合い(デコイ・クイックドロー)』」


 敢えて隙を見せるだけでなく、モンスターたちが好むフェロモンをばら蒔き、必殺の一撃を待つスキル。


 通常の居合い切りも、遥君に教えるくらい得意ではあるけど、やっぱりスキルとして扱われた方が威力が飛躍的に上がる。

 一撃を放つまで動けなくなるというデメリットはあるけど、モンスター相手だから、今の状態を警戒されて遠距離攻撃で対処しようなんてことはない。


 今だって水の柱から出てきたオロチたちと、最初のオロチの合わせて7匹が何も考えず、私の元まで突っ込んできた。


 おそらくは1匹、ないし2匹にはダメージを与えられるけど……。

 残りはそのまま私の身体に噛みついてくるはず、よね。


「死ぬ。でも慎二様は、ちゃんと逃げてくれているみたい。だからかな、悔いとか感じない。怖く、ない!」


 そうして私は剣を抜いた。


 1匹、2匹、3引目にも剣撃が届くかと思った時、残りのオロチ全員が私の脇腹に噛みつこうとする。


「やっぱり、駄目だった――」

「『水弾(アクアバレット)!』


 死を覚悟して目を瞑ろうとした時だった。

 私の視界にはぷるぷると足を震わせながら魔法を放つ、女性の姿があった。

お読みいただきありがとうございます。

モチベーション維持のためブクマ、評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ