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316話 あの子は強い

「苺、頑張れ。後少しで――」



 ――ビリ、パリ……。シュゥ……。



 応援に熱が入る宮平さんを他所に電気の音が弱々しくなる。

 そしてまるで風に煽られるように揺らめき、スキルイーターたちに纏わり付く電気の量が減り始めた。



「なんだこれ……。山吹のやつ、スキルを失敗した?」

「ううん。この効果もスキル。それで発動者は……うん、やっぱり。見て、どんどんあの赤い個体に電気が集まってるわ。電気を集めるスキル……ううん、そんなニッチなスキルだけを持った個体をわざわざここに連れ出そうなんて思わないはず。他にも個人や団体を対象とした吸収スキルなんかを持っていると思って警戒したほうがいいわね」



 感心するように、陽葵さんは映像を見ながら説明をしてくれる。


 無条件で相手の力を吸うスキルであれば確かに強力、だけど使ったスキルの名前は『避雷針』。


 真っ赤なこの個体、恐らくは苺の母親もオーガとして電気系のスキルに目覚めたと思ったほうがいいだろう。


 以前できなかったことがこんな形で使えるようになり、ようやくオーガらしくなれるなんて……皮肉なものだ。



『――おいおい、俺の電気魔力を操れる個体かよ……。耐性があるやつがいるのはなんとなく想定してたけどさ』

『……恩を売った。そ、れを捕まえて』



 ぼとぼとと天井から落ちるスキルイーター。


 その中でも生き残った何匹かがスッと立ち上がり、逆走。


 苺の行く手を阻んだスキルイーターと違ってこいつらはもう下を目指さない、軽く交戦してどこかに走り去るなんてしない。


 その目に映っているのは、今の一瞬で主となった真っ赤なスキルイーター、苺の両親を元にしたそいつが捕まえろと命じた人間だけだ。



『――しまっ……』

『づかあえだ』



 逆走するそいつらは器用に避けてくれる仲間たちの間を抜けてあっという間に苺の元にたどり着くとその手、足を掴んで笑う。



「苺!! やっぱり、ついていくべきだった。もしもの時のために、口で、知恵で守るためになんていってる場合じゃなかっ――」

「大丈夫です。あそこの階層は今、山吹と苺だけじゃない」

「そういえば……でも、あんなに細い女の子1人じゃ……」

「強さは見た目だけじゃないです。50階層の主と同じ位で、しかも俺が山吹を御するのに十分と判断した存在は……強いですよ」



『――パキパキパキ』



  不安気な宮平さんはこの音、氷の花が咲く音と共に驚愕のそれへと変わっていく。


 どうやらスキル『自動冷凍』はこの期間で昇華。


 魔法に、山吹の電気と似た自由度を手にしたらしく、ベアトリーチェは神々しく氷の翼をはためかせながら、スキルイーターの口から伸びた氷の弦と花を見ながら微笑。



「いらっしゃい苺ちゃん。あれが苺ちゃんのご両親?だったらお姉ちゃんとして挨拶しないと。あ、でもでもだからって好きってわけじゃ……なくもないけど」

「……ありがと。ベー姉」

「むしろ遅くなっちゃってごめんね。ちょっとこれをとってたの。『あの実』からちゃんとした種が……少しだけだけど、はい!」



 俺たちの前では決して見せないような明るい表情でベアトリーチェは苺に駆け寄るとそのポケットから見覚えのありすぎるその『種』を取り出した。

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