315話 見つけ、た。
『苺!! 真っ赤なやつを探せ!! どっかに埋もれてるはずだ!そんで俺は……一先ずこの辺の大丈夫そうな奴らからぶっ飛ばしてやる!さあ来い神宮! 奥で高みの見物なんて、させねえから』
山吹は挑発すると、ぱちんと指を弾いた。
すると突進していた探索者たちの足元に広範囲の電撃が走り、一部のスキルイーターに痺れを付与させる。
電気のエフェクトが各スキルイーターの、足……右と左でパリパリと音を鳴らす。
どうやら部位を絞ることでより多くのスキルイーターにその効果を及ぼそうということらしい。
全ての個体の全身をおのが魔力で状態異常付与させるのは魔力の消費が大きい、派手に見えるが、だからこその工夫が凝らされている。
しかし、ある程度耐性があるのかその足は止まらず進む。
それにぶつかりそうになる個体もちらほら見受けられるが、きっちりとそういった場合の動きが共有されているのか、後ろに影響が出ないようどの個体も注意を心掛けている。
この期間でその体を大きく、恐らくはステータスも強化させるだけでなくそれなりの教育も済ませているらしい。
勝手な判断をせず反乱も起こさないとなれば、わざわざ人間を起用する理由はない、か。
性能は十分、それでいて痺れ効果をほぼ受け付けない。
映像を見ていた探索者たちから落胆の声が漏れで始める。
でも……。
『――電磁拘束。今回は2種類で飽きないように用意させてもらったぜ』
山吹のスキルがこれで終わりなわけがない。
『天井特異磁力増強。相対特異磁力増強』
山吹は得意な顔を見せるとまずやや重そうに片腕を上げた。
すると、右足に電気のエフェクトが纏わり付いているスキルイーターたちは宙吊り状態となり、勢い良く天井へと吸い寄せられていく。
ビタンビタンと音を立てていることから、かなりの磁力、そしてダメージすらあることが伝わる。
『そんで持って……地上の奴らを結束』
山吹は続けざまに空いていた手をスキルイーターたちに向け、ぎゅっと握り込む。
そうすると今度は残りの痺れ状態のスキルイーターたちがくっつき合い、互いが互いの体に食い込んでいく。
その圧迫で息が苦しくなっているのか顔を青白くさせているもの、足や腕が変わった方向に曲がり、骨の折れる音を鳴らすものまで現れる。
「「――おお……」」
敵の被害は甚大。
今の一瞬で半分以上の個体が行動不能になり、思わず映像を見ていた探索者たちは感嘆の声を漏らした。
「苺……」
『どこ……』
そんな中、宮平さんは不安そうに映像を見つめ、それに答えるように苺はその足を早めて奥へ奥へと向かっていく。
『ぐあ……』
『くうっ!』
しかし奥へ進むにつれレベルの高いスキルイーターが増えるのか、苺の親探しは難航。
死角から飛んでくる攻撃は一撃一撃が重いらしくあの苺のフィジカルを持ってしてもはね除けることができないようだ。
『――避雷針』
そんな時、さらに奥から大きめの女性の声が聞こえた。
そしてそれと同時に天井に張り付いていたスキルイーターが剥がれ始め……。
『見つけ、た。お母さん、お父さん』
苺の口角は上がり、宮平さんが力強く握っていた拳からはぎしぎしと音がなるのだった。




