313話 行進
スキルによって生み出したプロジェクター。
それとスマホを繋げ、プロジェクターに手を置きながらスイッチを入れた。
するとプロジェクターから光が放たれダンジョンの広い壁に映像が写し出される。
ここまでならまぁ動力は違くとも普通のプロジェクターの機能と同じ。
で、ここからがスキルで作り出された機械の見せ所。
「うん、あるな。複写スイッチオン」
イメージの中で設けた一際大きなスイッチを俺は押す。
スキルを発動させるにあたって、イメージは何よりも重要で、各部位は具体的に頭の中ですればするほど結果に反映されやすくなる。
ただこれには限度があり、どこもかしこもそのまま反映、出力するということはできない。
いや、正確には出きるかもしれないのだけど、俺のスキル錬度ではまだ不可能。
つまりどこを重点にするかが肝心で、俺のスキルは発展途上。
ただこの一点に集中するという方法で、俺はスキル『創造』の可能性を見出だした。
それはファンタジー機能の実装。
山吹の助けがなくとも、ある程度なら通常あり得ないような効果を付与させることができるというものだ。
「長時間は無理ですけど、とりあえずこれで山吹たちを見守りましょうか。ダメそうだったら……容赦なく罠使います」
「ふふ、とか言ってダメそうになる想像なんて全然ないくせに。むしろ苺ちゃんの戦いぶりも見せて好感度上げようとしてるのよね?」
「……苺、頑張れ」
だからこのプロジェクターはボタン1つで壁や天井にいくつでも、それだけでなく他の階層にまで画面を作り、映像を流すことができる。
これも敵が攻めてこない間に発見、強化できた部分だから何だかんだありながらもたっぷり時間を使えたのはありがたかったんだなって、改めて思う。
いや、結構苦労したけど出番があって良かった。
楽しそうで嬉しそうな陽葵さんはともかく、もう応援することしか考えなくなってる宮平さんにももっと驚いたリアクションして欲しかったんだけどな。
なんだろ、最近は俺の周りこのくらいのことじゃ動じなくなってきたな。
『――ひ、ひぃぃぃ!! く、来るぞ!! お前ら!! か、開戦だああああああああああああああ!!』
階層にいる人たちが準備を整えながらモニターを見ていると、映像から大声が響いてきた。
これ、映像そのものから音が発せられるというあり得なさに、少しは驚くんじゃ――
「……」
「……」
「……」
「……って誰も反応無しか流石にそれは寂しい――」
陽葵さんと宮平さん、それにこの場で待機していた他の探索者たちの顔をちらちらと確認する。
その顔にはスキルに驚いた表情はなく少しがっくり、と、思ったのも一瞬。
ほとんどの人たちの表情は青く強張り始め、こんな冗談も言えないほど辺りは緊張感に包まれていた。
というのもそこに映っていたスキルイーターは波のように押し寄せ、1階層のモンスターや花や草を踏み潰し、蹂躙、真っ直ぐ高速で進軍していたのだ。
「なんか……やたらとデカいのとか、獣みたいなのとか、いびつで……凶悪な顔ですね」
「ええ。ただダンジョン街の人間を淘汰するための、殺人兵器ね」
「苺……」




