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312話 見ててやるかあ

――ピコン。



「切れたか」



 スマホに通話終了の文字が表示された。

 山吹は伝えたいことはもう全部伝えたと思ったらしい。


 なんとも豪快で雑。



「……。宮平さん。……苺の身勝手で罠を発動させないなんて言うことは俺はしません。ただ罠を発動させない言いわけを、納得できる理由は皆に見せないといけないと思うんです。そうしないと、これから戦ってもらう人たちの士気にも影響しますから」



 電話が切れたことを確認すると俺は宮平さんに向き直った。



「それはつまり……?」



 山吹のいつにもまして自信有り気な口調を信じて俺は宮平さんにこれからすることの理由を説明する。


 宮平さんはなんとなくそれに察しがついたのか、申し訳なさそうな態度の中に少し楽しそうな表情も窺える。



「遥君、何を?」

「陽葵さん、山吹に上層を任せる際に色々探索者協会から条件が出されましたよね?」

「えっと……。探索協会からのダンジョン街簡易移転作業依頼、またそれに関わるボランティア活動への参加、即時危険報告、1階層でのスライム捕獲業務、契約モンスターの選定が遥君に一任される、とかだっけ?」

「厳密にはその階層を一時占有することから、依頼料からいくらかしょっぴかれたり、なにやらあるみたいですけど、主な条件はそんなところです」

「……それでそれが何なの?」



 焦らされてもどかしい様子の陽葵さんは可愛らしくむすっとする。


 この顔をもう少し見ていたい気もするけど、あんまり意地悪するのは後が怖いからここまでにしようか。



「その即時危険報告なんですけど、実は山吹の様子を監視する意味も込めてカメラを何十台も設置。魔石による電力供給やスキルを使って常にその様子を探索者協会上層部と、推薦した俺だけが階層、というか山吹を見れるようにしているんです」

「え……ダンジョン街の様子見映像をじゃないんだからそれはいくらなんでも可哀想じゃない?」

「そう思ったんですけど本人も了承済みで、むしろ乗り気、それに……何よりそれだけ注意しないといけない男というのが探索者協会の判断だったんですよ」

「……確かに遥君のこの前の探索報告での彼の働きは目を見張るものがあったけど……まだS級にだってないのよ、彼」



 山吹に対してそこまでするのはおかしいと、遠回しに言う陽葵さん。


 ただこれまでの結果、赤やハチの反応……神測がさせてもらえない状況、そしてなにより、山吹の身体にはこのところ京極さんと同じ竜の鱗が見られるようになった。


 それでも赤とハチはそれを否定していたけど、山吹ならあり得る。


 例え竜としての、階層主という地位を捨ててでも、自分がしたいことをやりたいことをする、馬鹿だけど実直に真っ直ぐに進むやつだから。


 それにあいつは見た目や口調以上にプライドが高い。


 結局俺のことも『並木遥』呼びで、『さん』をつけるどころか先輩とも言うことはなかった。


 そんなやつが自分をこけにしたやつ、逃がしたやつをそのままにしておくはずがない。


 そしてそれが今日……ちょちょいのちょいであるというのなら。



「まあ、見ててやってください。……創造、プロジェクター……映像を魔力元出力」

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