31話(他キャラ視点エピソード) 悲鳴
「『気刃十文字』」
「流石深階層を主な狩場にしてた探索者だ。全く危なげない。それにここまでの道のりも、あれ、えーと、殺気? みたいなのだけでほとんどモンスターを近寄らせないのは凄いね。それで……なんで俺と1、2階層で狩りをしてたときは、本気じゃなかったのかな?
「弱いモンスターは、怯えて隠れてしまうので、上層で沢山稼ごうと思ったらあれくらいの方が効率がいいんです」
「ふーん。ま、お前が戦闘をサボるとは思えないし……。これからを思えば、探索者としての腕が鈍ってなかったって確認できたからいいとしようか。それでどう? オロチらしいモンスターの気配って感じるか?」
「大分強いモンスターの気配があります。それがオロチかどうかは分かりませんが、慎二様は私たちの後を――」
「当然。何かあった時、お前たちは俺の楯になりたいって言ったんだから。いいか、絶対に俺を裏切るような真似をしてくれるなよ」
「はい」
オロチの進攻を遅らせるため、私たちは遂に4階層に到着。
進めば進むほど、辺りからモンスターの姿が消え、この奥に何かがいると知らせてくれる。
実際にオロチが街を襲った時、私はダンジョンで狩に明け暮れていたこともあって、立ち会えなかったけど、聞くところによると、その強さは何より攻撃力の強さによるもので、俊敏なタイプではないらしい。
水属性の魔法や巨大な身体から放たれるなぎ払い攻撃は、範囲が広く、タンク役の探索者は勿論のこと、接近戦が苦手な後方支援役の探索者まで防御に徹する場面が多かったらしい。
だからオロチを見つけ次第距離を詰めて、足で翻弄する立ち回りがベスト。
攻撃こそが最大の防御になりえるはず――
「あ、あの、私は危なくなったら勝手に逃げますからね。あくまで状況を伝えるのが役目なので」
「分かってますって。でも、逃げる前に勇敢に戦う俺……俺たちをしっかり見届けてくださいよ」
「は、はぁ」
ここ最近、慎二に魅了された子たちばかりといたから感覚が麻痺してしまっていたけど、そうよね、そんな風な態度で話をする奴なんてちょっと引いちゃうわ――
「きゃあああああああああああああああああ!だ、誰か助けてええええええええええええええええ!!」
「女性の声……。陽葵、これって……」
「方角からしてオロチの可能性が高いです」
「……ふふふ。これは俺の、俺たちの活躍を見せつける最高のチャンス。しかも相手が女となればまた魅了をかけて……。よし! 急ぐぞお前たち!」
「はい」
怪しく笑う慎二の命令を受けて、私たちはその場に急行。
そして……
「いました。データで見た通りの姿、オロチです。それと襲われている女性が……。待って。あれ、人間じゃない……」
私たちの目の前にはオロチと、限りなく人間に近い姿の女性が映った。
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