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302話 先輩後輩

「――ふんふんふん……。そっちのご飯楽しみ。山吹、今日は御馳走なんだよね?」

「あのぅ……はい」



 あれからしばらくして、俺たちは50階層をあとにした。


 ゴーレムやらアンデッドフェイカーとか邪魔な奴らが攻撃をしてこないよう、ポチが階層主の権限を行使してくれたおかげで帰りはもうただの散歩状態。


 それだっていうのに陽気な女性とは反対に、山吹は自分の財布の中身を確認しながら項垂れている。


 このままは流石に可哀想だからある程度金銭問題は探索者協会を通して援助していこうと思ってるけど……今は静かな山吹がちょっと面白いから言うのやめとこ。



「――それにしても、2人があんなに強いとは思わなかった。でも……地上の人間はもっと強いかもなんだよね?」

「ん?ああ、それに数も多いし情報が少ない。スキルイーターはまだしも他の奴らの強さが……特に怖いな」

「そっか、怖いってまだ思えているんだ」



 女性の質問に答えながらこの探索で発現させることのできたスキル『分配』の効果を思い浮かべる。


 これは元々神宮の、地上の人間が持っていたものであって、経験値を分配できる効果がある。


 つまりそれは偉そうに高い椅子に腰かけているだけでもレベルアップが可能ということで……地上の人間がこれを利用して戦力を底上げしているということが分かる。


 しかもこれは何年もかけて継続していただろうから、レベルは全員上限一杯だと思ったほうがいい。



 実践でそのレベルがちゃんと活きるかどうかは分からないが、それでも100レベルの軍勢が押し寄せるという事実に、改めて冷や汗が出始めてしまう。



「――あっ! ようやくだぞ2人とも!!」



 そんな俺の困り顔をなぜかニヤニヤしながら見る女性。


 なんともいえない空気に少し気まずさを覚えていると、先頭を歩いていた山吹が大声で呼び掛けてきた。


 というのも、今俺たちが上っている緩やかで薄暗い階段の先が眩く光ったから。



 ポチが一旦階層の仕組み全部をリセットする関係で階層とその階段が極端に短く小さくなるかも、何て言ってたけど本当にここまであっという間だったな。


 というかこんなことができるならハチや赤にもいろいろダンジョンを改装して欲しいんだけど……。



『それはちょっと無理かな。一応序列ごとに権限も決まっちゃってるから』


 ハチのやつ……また俺の思考を勝手に。

 まぁ、なんとなく気づいてはいたけど……本当に暇、なのか?


 ま、それはいいか。段々慣れてきたし。



「……。ってことは50階層の主になったポチはハチよりも偉くて……もっと偉いやつもいるってことだよな?」

『いる。私なんて話したこともないようなのが。って、ポッちゃんは後輩で成り行きでそうなっただけだから偉いとかそんなのな――』




「――おっ! か、帰ってきたぞ!! おーいっ!! お前ら、祝宴の準備だ!!初の到達者を出迎えろ!」




 ハチが必死に否定をしている中、俺たちは光を抜けまるで何日も経ったかのように懐かしみながら41階層の地を踏んだ。


 するとそんな俺たちを待っていたのか、1匹のモンスターが驚いたような、でも嬉しそうに大声をあげる。


 誰も到達できなかった50階層に着いただけじゃなく、主を倒して完全に踏破したとはいえ……まるで英雄扱い。


 うん、嫌じゃない。

 でも一体誰がどうやってこれを伝えたんだ?


 俺たちよりも早く戻ったやつはいないんだけど……。

 ちょっと嫌な予感がする……。

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