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291話 捕まえた

「ある、存在…。うっ、ぐっ!!」



 軽いジャブの中、唐突に反対の腕によるストレートが飛んできた。

 それは俺の両腕のガードを壊そうと無理矢理捻り入り、そのまま眉間に押し当てられる。



 満足のいく打撃だったのかグレンデルは嬉しそうに口角を上げている。



 勢いは大分殺したが、それでもそこそこな痛み。

 それに微弱ではあるが電気を纏っていたのだろう、殴られた箇所には打撃のひりつきとは違う、明らかな痺れがあった。


 神測による雷耐性の向上がなければ、再びガードを上げるどころかその場に立っていることも難しくなる、そんな一撃だったかもしれない。



「これを耐えるか! 残念ながらまだまだ俺はこの力を扱いきれないらしい。だからこそ、より強くなる必要がある!」

「そうか、考えなしにその力を分け与えた奴が……ある存在だと」

「そう!あれはその一つ! それこそ50階層にいるはずのモンスター雷の竜!あれは強かった、俺が苦戦を強いられた人間ですらばったばった倒すほどに。だがその姿は……人間を模していた。そう、あれですら人に憧れていた。それで俺は確信した、人こそ最も優れたモンスターなのだと」

「そう、かよ。神測」



 テンションの上がるグレンデルは一瞬だけ手を止めた。


 その瞬間俺は再び神測を発動。

 グレンデルの素早さを測る。


 あれだけ攻撃を受けても腕に痣ができる程度……防御面でも攻撃面でもこっちの能力は足りている。

 となればあとは早さと、それを捉える動体視力が欲しいが……。



『現在のスキル主のそれをBランクとするならばグレンデルはAランク相当。ただし、適応できない差ではありません。そのため、戦闘が五分以上になるため観察力の向上を検討、実施……。深部にある既存のそれを掘り起こしました。補完が完了しました』



「え?」



 今までと比べて大した変化が、強化がない。

 それどころかこの攻撃の早さに対応可能とか言われて、変な声が漏れてしまう。


 しかもそうしている間にまたグレンデルは攻め手を伸ばして、話を再開しようとする。



「そうして俺もその存在に付いていこうとした。だが、雷の竜は俺に力をあてがうことで役目を押し付け1人で消えてしまった。そうなれば仕方ない、俺は自分の縄張りとなったはずの50階層を目指して、ダンジョンを下ることにしたんだ。で、まだギリギリ息のある奴、ほとんど死んだ奴を無理矢理盾にした。中でも役に立ってくれたのは死んだあとも利用させてもらったけどな」

「それがリッチー、か。はぁ、なんでそんなことをされて忠誠心が残っていたんだか……。……。それも、スキルなのか?」

「半分正解。元々俺は種族の中でも上の存在で、それなりに権限があった。だから子分みたいなのはそこそこいて……なんてことはない、その心をちょっと膨張させてやったのさ。例えばそう、こんな風に――」



 またグレンデルの口角がピクリと上がった。


 この嬉しそうな表情。

 さっきのストレートを放ったときと同じ……。



 ――ゴンッ。



「お前……。そうか、ようやく本気か。いささか驚いた……だが、だからといってここからどうしようと?」



 俺はあえてガードを上げず、右拳の一撃を頭部にもらった。

 そして、俺は本命であろう左拳だけをなんとか捕まえることに成功したのだった。

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