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290話 強さの理由

「だとすれば、ここにくるまで……こうなる前に何があったんってんだよ――」

「俺の問いに答えるよりも先に質問か……やはり人間は頭が働く代わりに傲慢な生き物なんだな。俺たちを、モンスターをこれでもかと見下している。ただ……いいだろう、これだけ俺の攻撃を受けても屈しないその胆力を評価して特別に教えてやる。まぁ、話し終わるまでにその余裕が残っているかどうかは分からんがな」



 グレンデルはニヤリと口角を上げると、続けて腕を鞭のようにしならせて右の拳で顔を狙って殴ってくる。


 先程よりも片腕で守りを固めていることから、一発一発が軽い。

 これくらいなら、怯んだり痛みが長く持続することもない。


 しかしその早さのせいで余計にこちらから攻撃を仕掛けられない。


 もしかすると俺が拳闘勝負を苦手としていることがバレてしまったのか?

 それとも、俺が打ち出した拳に恐れ戦いた……はないか。



「……今のうちに」

「早すぎて横入りできねえ……。悔しいが俺も治療の手伝いをすんぜ」



 俺がグレンデルのその拳で顎を撃ち抜かれないように両腕のガードを高くして、なんとか凌いでいると、女性と山吹はポチの元まで走り始めた。


 正直誰かを守りながら戦える相手じゃないからそうしてもらえるのは助かる。



「はは! お前……人徳がないんだ、なっ!」

「ぐっ……いいから、話せよ」

「……。はっ! 安心しろ! その強がりが続いてるうちは話してやるからよ」



 そんな様子が面白かったのか、グレンデルは嬉しそうな顔を見せるとさらに攻撃の速度を上げた。


 そして俺が困った声を出すと、脇腹辺りまで攻撃範囲が広がってしまった。


 これ、長くは持たなそうだ……。



「あはは! 俺はな、あの時から研鑽を積むことを覚えた! その結果、余分な筋肉を削ぐことを覚えた! スキルの豊富さを、人間の器用さとレベルの概念を!」

「あの、時……?」

「青いオーガ……あんの臆病な者がいなくなってからしばらく、俺たちを殺しに大勢の人間がやってきた、あの時からだ」



 青いオーガ……。

 それって、もしかしてそれって苺の……。



「他の奴らは青いオーガを特異個体としていじめ、その話を聞こうとはしなかった。そもそもあいつは人の言葉を話していたからな。何を言っているかも分からなかったんだが……俺は違った」

「違った?」

「ああ。俺はそいつが何を言っているか、聞こうとした、考えた。なんとなく人間の言葉が理解できるほどに。とにかく強くなりたかったから。強さへの探求心が止められなかったから。だがそいつは捨てられ……人間に連れてかれた。その人間の強さは異常だった。どのくらいかというとこの俺が、岩影から覗くだけで精一杯だったくらい」

「……」



 なるほど、あの瞬間こいつはどこに隠れて一部始終を見ていたと。



「俺は人間の凄さを知った。だからあの時、周りの連中が青いオーガ、疫病神が人を連れてきたことを恨む中、俺だけが心を踊らせた。また、強くなる手掛かりを得られるってな。それで俺は仲間を人間の元へあえて出向かせ、情報を手に入れた。時には俺自身出向いて、その戦い方を学んだ。そうして手駒はあっという間に尽きかけ、俺たちは後退。階層を下って下って……毎日戦い続けた。そんなある日俺はある存在に出会ったんだ」

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