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282話 凍撃

「く、ぐああああああああああああああああああ!!!」



 リッチーによる苦し紛れの絶叫。

 それは自分の身体、骨が抜け落ちるほどのものであった。


 見た目以上にデメリットのある行為なのだろう、その顔はこれまでと比較にならないほど焦り、皮肉にも最も人らしい表情に変わっていた。


 醜い姿、だがそれをさらけ出したお陰で水弾は揺れ、削られ、中心から逸れた。



 ――バキッ。



「ぐ、おおおおっ!!」

「まさか、これを耐え凌ぐか」



 水弾はリッチーを、リッチーの骨の腕を根本から食いちぎった。


 骨の折れる音は生々しく響き渡り、役目を終えた水弾は弾けて霧散。

 ここ一番の奇襲は虚しい結果に終わった、かのように思われた。



『経験値の取得、また対象にそれが分配されました。女性のレベルが上がりました』

「まだ……」

「ちっ!」



 急いで距離をとろうとするリッチーを女性は追撃しようと前に出る。


 その際リッチーの落ちた腕は蹴飛ばされて瞬く間に冷凍保存された。

 咄嗟のレベルアップアナウンスから察するに、分配されているスキルに関してもまた強化されたのだろう。



「――やっ! とっ!」

「くそ! この程度! 普通の状態であればなんとでもないのだが…… 」



 女性の打ち出す拳や蹴りはより素早く、風を切る音が破裂音に近いものに変わっていた。


 それでもそれをリッチーは受け、時にはいなす。


 ただ、決してカウンターには出ない。


 というのも女性が攻撃する度に、霧散しリッチーの身体に残った水が瞬く間に凍って次の攻撃を妨げているから。


 水の量が足りないのか、それともまだ女性のレベルアップが足りないのか全身を凍らせるまでには至らない上、凍らせてもそれを砕かれ、その部位の動きを完全に止めることはできていないが……それでもこの状況は、間違いなく有利。


 とはいえ、勝つには決定打が必要。

 結局消滅させても復活してしまうし、どうしたものか……。



「……って、そういえばあいつの腕元に戻ってないな」



 女性とリッチーの攻防を観察しつつ、次の一手を考えていたのだが、待てど待てどリッチーの腕は元に戻らない。

 肉のある腕に変わることもない。



 それにリッチーのやつ、触られることも嫌がるような素振りじゃないか?

 これってつまりは……。



「この、俺が……まさかこんな女相手に……。仕方ない、ここは一旦引いて体勢を整える。それであのお方に、今度こそ種を、紛い物ではない本物の種を頂く。さすればこんな奴らなど、敵ではない。……『震脚』」



 ぶつぶつと呟いたかと思えば、リッチーは脚を超振動させてそのまま地面を蹴り高く飛んだ。


 それだけでなく、そのあとも一歩、二歩と今度は宙を蹴って移動し始めたのだ。



「あいつあんなこともできるのか……」

「あのお方と、本物の種……待て!!」



 女性は慌ててあとを追うが間に合いそうもない。


 俺も、この距離では攻撃は間に合わないだろう。

 水弾はあと1発残っているけど、あんな風にちょこまかと動くものを追いかけてとらえるほどのコントロールも、速度アップも出来そうにないし――



『――それくらいなら任せて頂戴。でも、あの女の子をあれのところまで運んであげた方が良くない? ねぇ、遥様』

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