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274話 醜悪

「心、か……。確かにモンスターといえど心はある。だが通常それは利害を推し量り、自分が満足できる結果を得ようとするだけの……醜い強欲心とでも言おうか。女、お前がどんな幻想を抱いているのかは分からないが、少なくともアンデッド、アンデッドフェイカーは自ら種を求め、その挙げ句この姿に成り果て、そして今もなお欲求にとりつかれ、好んでこうしているのだ。だから可哀想だとかどうとか……そんなことを思う必要などないのだよ」

「でも……私は、私の知っているモンスターたちはそうじゃなかった。温かかった。それだけじゃない心が、自意識があった。誰かのために身を切れるような。そんな心が……」

「で、そんな自意識によりお前はあのお方を裏切って42階層に人間やモンスターを招き入れた、か……。それだけでなく、わざわざ生き残った何匹かをコロシアムまで戻すような手伝いをしていたと。やれやれ、そのお陰であのお方への食事を確保するのがどれだけ大変になったことか。階層主が自らゴーレム壊し、一部モンスターを助け、食事を制限させ……。知っての通りわざわざアンデッドフェイカーを差し向けなければならないほどの状況だったのだぞ。……理由を、言い訳をする機会をくれてやる。だがその答えによって俺はお前を殺す。あのお方がどれだけお前を贔屓しようともだ」



 群れるアンデッドフェイカーたちは、一頻り俺の魔力を吸い上げて満足したのか、今度は女性にその視線を向けた。


 話しているうちに怒りが沸々と込み上げてきたのか、俺の頭を掴む力は増し、女性を注視するようになった。


 魔力の四散は終わった。

 少し身体はだるくあるが、これくらいなら……神測を発動する余裕はある。


 この話に興味がなくはないが……悪いけど、少し無視させてもらう。



「……。私はあのお方……あの人を元に戻したいだけ。また話がしたかっただけ。それに……」

「そうか……。それだけで邪魔をしてくれたと……。なんだなんだ、あれだけ言っておきながらお前も他のモンスターと同じじゃないか」

「違う」

「違くはない。あのお方に構って欲しい。その強欲心だけによって突き動かされているのだろう? そのために何匹もの可能性のあるモンスターが死に、半殺しにされたものは死ぬことも糧になることも許されず戻され、恨みだけが募る。モンスターたちから見ればお前はただの死神で、ここにいるアンデッドフェイカー、俺の傑作よりも醜悪ではないか」

「それは……本当に悪いことをしたと思ってる。でも全員助けようとしていれば、もっと食事が足りなくてコロシアムまでその手は伸びていたかもしれない。だから、仕方なかった……」

「仕方なく、見殺しにし……あまつさえ種をもコロシアムに持ち込んだ」

「!?それは、その……」

「種の力を使ってまでモンスターを呼び込もうとするとは……俺ですらしなかった。その姿、状況を可能にしている訳がなんとなくわかった気がするぞ。……このようなクズは、異端者は殺さなければならない。でなければ足元を掬われかねない。これは、俺にまだ生があったとき得た教訓だ。お前ら、こいつを殺せ。この階層で生まれたお前たちはこの女に歯向かえる力があ――」



『――神測完了しました。長時間の接触、また接続時間により新たなスキル、弱点となるスキルを発現させることに成功しました』



「――剣生成……。早次元を斬るっ!!」

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