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272話 ローブ

「神測」

「……解除」



 この暗い中戦うのはまずいと思って、俺は神測を発動。


 敵の位置を把握後、すぐに攻撃を仕掛けられるよう体勢を整える。

 そして女性はそんな俺に合わせて手と手を繋ぐ氷を溶かしてくれる。


 ただならない緊張感のせいか、この間がやけに長く感じる。

 カップラーメンの待ち時間3分が、10分にも20分にも思えてしまうあの感覚に近い……。



『……敵位置把握。正面10m先。距離感覚が現在の視覚情報のみの場合、通常時よりも著しく低下。敵位置が把握できるように火属性の魔法、また魔法陣を展開します』



 なんだか神測まで俺を焦らしたかのように感じてしまったし、実際長かったように思える。



「なにかおかしくないか?ここ……」



 違和感を覚えている間にも、展開されていく魔法陣。


 ついついそのネオンライトにも似た発光に視線を奪われてしまうのだけど、これが俺の違和感を確かなものにしてくれた。



「これは……。やっぱり、遅い。重力、熱帯ときて今度は遅くなる……ノロノロ部屋ってところか?」

「気を付けて。スキルとか魔法の発動は明らかに遅い。視認する速度も聴覚も第三者の目線だと遅延されてる。それでいて……やっぱり干渉できない」



「――当然だ。さっきまでの階層と違ってここは我が直接支配を任されている。そう易々とはいかんさ。女、いや42階層の主よ」

「……」



 偉そうで堂々とした低音が響くと同時に、ようやく魔法陣が完成。


 攻撃用とはまた違う、小さくて温かくて、照明灯にも似た刺激のほとんどない明かりが階層全体を一気に灯す。


 闇が晴れ、そこに映ったのは深くローブを被った1匹のモンスター。

 そしてあちこちに散らばり、地面を覆い隠す大量の骨とそれに巻き付きながら上に伸びる弦と白い花。

 よく見れば果実のようなものもなっているが、見たことはない。


 それになぜかポチたちはいなくて……でも、あれはさっきのグレーターアンデッド?



「あ、ああ……。種、種を……。あれがあればまだ戦え、ます」

「……。傷が癒えていないところを見るに、ふるい落とされたのだよ、お前は。ここにくる資格がないとされてな」

「で、ですが、私は」

「そうだ。私はお前たちを実験台として、そしてこの上で働くに相応しい玩具として作ってやった傑作、の欠片。ならばもう1度くらい役に立てるはずだ。さあ口を開けろ」



 ――ぶち。



 這いつくばり、動くのもやっとといった様子のグレーターアンデッドにローブを被ったモンスターはそう命令すると、近くに実っていた果実を1つもいだ。


 果実はまるで生きているかのように鼓動し、握りつぶされると赤い果汁を垂らす。


 それは人間を想起させ、不気味以外のなにものでもない。



「1粒だって残すな」

「あっ! ぐあ! う、ま! ぎ、気持ちいぃ……」



 そしてローブのモンスターはそれから種だけを取り出すと、手袋がはめられたその手で種を潰し、グレーターアンデッドの口の中へ。


 うまそうに食べるその顔は今にも天まで上りそうな蕩け顔。


 加工したものは依存性が高くなるって聞いてはいたけど……これは相当――




 ――パン!



 そんな情けないグレーターアンデッドをよく観察していると、突然その顔は歪み、どこからか弾け飛ぶような音がすると溶けるようにして消えてしまった。



「副作用が及ぼす影響の範囲が増えた……。ということは、新しいこれはさらに強化されたものなのだな。ふふ……。あはははは!! 今日はとことんいい日になりそうだ」

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