表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

270/406

270話 多忙

「!?」



 芯から凍っていくグレーターアンデッドの脚。


 表面上はすぐにその様子が現れないものの、グレーターアンデッドの驚いた顔と、止まった脚がその効果の大きさを伝えてくれる。



「ぐ、おおおお!」

「出来ればもう少しゆっくり仕事させて欲しいんだけど……」



 まだ凍結が完全じゃないにも関わらず、グレーターアンデッドは俺をその口で挟み圧殺しようとする。


 通常であればこの作業を中断しなければならないような状況だが、今度の俺は二刀流。



「仕方ないから、大人しく燃えてくれ」



 もう片方の炎の剣で俺はその口を斬った。

 完全にその部位を落とせるだけの箇所に的確に攻撃を当てることはできなかったが、それでもこの粘っこい炎は傷口から再生するそれを押し返すように燃えて、攻撃面を焦がし、消してくれる。


 それが約5秒ほど、炎が消えるのを待つことがたまらないグレーターアンデッドは続けてその小さな手や長い尻尾を使ってなんとか攻撃するが結果は同じ。



「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」



 俺の『ヒートサイド』におちょくられるだけおちょくられて、怒り心頭か。

 折角話せるようになったのに、出てくるのがそんな音だけじゃ勿体ないって思ってしまう。



「っと、吠えてる間に完了――」



「――反発!!」

「……」



 1匹処理して周りを見回すと、山吹がスキルを使いつつ困った顔でこっちを見ていた。


 それに女性は女性でグレーターアンデッド数匹の気をなんとか惹き付けようと、辺りを走ったり飛んだり大忙し。


 1匹を止めたからって呑気にしてる場合じゃないな。



「まずは……そっちから!!」

「え!? ちょ、こっちも限界をだっての!!」



 まだまだ話す余裕のある山吹は一旦無視して女性に群れるグレーターアンデッドまで駆け寄る。


 面白いことに俺が近くに寄ろうとも、1度女性に集中してしまったグレーターアンデッドたちは俺に目もくれない。

 仲間がどうなったのかを理解していないのか?


 だとすれば言語の獲得よりも、もう少し危機管理能力の向上……純粋な知能を高めないと駄目だろ。



「ただ、今はお前らがお馬鹿さんで助かったよ」

「!?」



 同じ要領でグレーターアンデッドを凍結。

 あまりにも簡単な仕事に勝手に笑みが溢れる。



「……」



 女性もその様子に安堵したのか、やや動くペースを落とし、そして道のその先に視線を向ける。



「で、でかい! 重い! も、もうもたねえって!」



 すると弱音を吐きながらだらだらと汗を流す山吹の姿、そして先に見えていた光をその影で覆としているポチの姿が……大分小さいけど、ギリギリ見えた。



「も、もう……。ダ、メ……」

「うがあああああああ!!」



「――わん!!」



 山吹が押し負けてスキルを解除、その場に倒れた瞬間だった。


 通路にはポチの元気な鳴き声が響き渡り、地面が揺れ始めたのだ。



「こ、これって……上から落ちてきたのと同じ、いや似ている?」

「……あと、少し」



 か細くだけど女性が声を発した。

 発することができた。


 すると……。



『ポチが当階層の核機能、ポイントに抵触……変更が確認されました。その位が上昇。ダンジョンのシステム、その他諸々の影響をより強く受けることが可能になりました。またこれに付随して女性(名無し)の自意識が完全に確立されたようです』



 本日多忙のアナウンスがまた頭の中で響いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ