264話 ひんやり
「斬撃はダメ、電撃もビックリするだけ……あとはどうするよ?」
「火と水を試せはするけど……さっきの電気の弾の痕、あれもパッチワークみたいになって塞がってるんだよな。あっという間に。……あの巨体を燃やしきるよりも先に再生される可能性は高い。だからって一発で燃やし尽くすには俺の魔法じゃ不十分……」
「つまり……それってそういうこと?」
「ああ。……。全力で走れ!!」
俺の合図とともに山吹はポチを脇に抱えて全力ダッシュ。
もう振り向こうとすらしない。
女性もそれについていこうと腿を高めにあげて走るが、やはりきつそう。
どうにも原因は分からないけど、今さら帰れだなんて言えるわけもないし、言いたくもない。
「ごめんな。本当はあれを全部片付けてやりたかったんだけど……。せめて、少しでも楽になれるように努力はするから。『神測』」
『――女性の体温を測定。人間の平均値、及び類似のモンスターの平均値よりも高いことを確認。また対象の平温よりも高いことから、これを下げる方法を模索。……。契約モンスターが新たに獲得したスキルが効果あり。再びスキルの貸出を行います。ただし、これらは劣化版となり効果を最大限発揮することは不可能。負担もあるため、連続の使用はオススメできません。……。補完しました』
ダメもとで神測スキルを発動すると、思いの外対応することができる状態にあったようで、ハチの持っているというスキルが勝手に発動。
瞬く間に俺の手はひんやりとし始めた。
「ハチのやつ、こんなスキル持って……あっ」
ここに来る前、山吹に大仕事をしてもらっているとき、そういえば何人かにあの時スキルイーターから吸出したスキルの情報を条件に合いそうな人にインストールしてたっけ……。
まさかあの時スキルイーターたちを凍らせていたスキルがこんな形で役立つなんて思いもしなかった。
「しかも名前通りの『冷凍保存』効果だけじゃなくて、こんな使い方までできるのか……。ごめん、少しびっくりするかもだけど、これで大分良くなるはずだから」
そう言って走りながら俺が手を差し出すと、女性は息を切らし、でも確かに頷いて自分から俺の手を握ってくれた。
初めて会う男の手なんか触りたくないって、今時の人間の女の子は言いそうなものだけど……モンスターはそうじゃないらしい。
「……!?」
「冷効果対象を変更。保冷機能は……持続で」
俺としてはひんやり、といったくらいの効果だと思ったけどそうじゃなかったのか、女性は目を見開いて視線を向けてきた。
ここまで大きな反応は今までで1番。
「冷えすぎたかな?もうちょっと効果を緩めることも……多分できるけど」
「……」
大丈夫と言いたげな様子で首を振ると、お礼のつもりなのか女性はぺこりと頭を下げた後スピードを上げた。
辺りは確かに暑いが、それだけでは説明がつかないほど火照り赤くなっていた女性。
それもあら不思議、このスキル1つであっという間に汗さえ見えなくなりました。
……代わりに手足、腹筋に筋肉痛に似た痛みが表れたけど。
「負担、か。今のハチの顔を想像するのも恐いな――」
『まさか、あれに干渉できたというのか?』
痛む身体で女性を追いかけようとしたときだった。
俺の耳には微かに、そして確かにアナウンスとは別の声が聞こえた。




