263話 ゴロン
「ってなにやってんだ俺……。で、でかいからって格上とは限らねえってのに。しかもしかもあの骨サメの皮ってなら尚更!すぅ……『電弾』!!」
山吹は首を横に何度か振ったかと思えば、自分で自分の顔を両手でバチんと叩いた。
そして青白い光を全身に灯らせ、それを掌に集中。
バチっと一際 大きな電撃音で鳴り響いたタイミングで、山吹は集中させていたそれを解き放つ。
「ウスノロにこれは避けられないだろ?」
俺やハチが使っている水弾よりも速度はありそう。
ただ弾自体は小さくて、心もとない。
他のスキルの優秀さに比べると、攻撃面は大分劣る印象を受けてしまう。
この辺りはレベル通りの期待値ってところなのかな?
ま、とはいえ……。
「があ!?」
この驚いた声。
痛覚遮断があるとはいえ、まったく攻撃の効果がないってわけじゃない。
骨だけのアンデッドフェイカーと比べて皮膚や毛のようなものがあるからか、被弾した部位には火花が散り、若干煙が上がっている。
そして進む足がやや遅くなっている様子からして痺れもある。
山吹はこいつ相手にも十分戦える。
逃げるよりも総力戦で1度一掃してしまうなんてことも一考でき――
「が、あ!!」
「うおっ!! こいつ、ビビるどころかやる気満々かよ!」
アンデッドフェイカーの皮は痛みはなくとも痺れで遅く、動きにくくなった身体に苛立ちを感じたのか、歩いて前進することを止めて、前転することで俺たちに最接近。
そのままその巨大な尻尾を振って攻撃を仕掛けてきた。
慌てて俺たちは回避。
女性にいたっては反対に攻撃を仕掛けようとするが、アンデッドフェイカーの皮は続けて横転。
一向に攻撃の隙を与えようとしてはくれない。
「……!」
「くっ!」
「ポチ! こっちにこい! ……ちっ。なんだよ、結局追いかけっこかよ!」
それでいてその横転は永続でやたらと速い。
俺たちは慌てて走り出し、ポチは山吹に抱かれてヨーイドン。
ついに灼熱の鬼ごっこが始まってしまった。
しかも……。
「があ!」
「あぇあ!」
他のモンスターたちも楽しそうに吠えたかと思えば、モノマネを開始。
どいつもこいつもちっちゃい手足で移動することを放棄したのだ。
「……マジで?」
「神測だとゴールはまだまだなんだけどな……」
ゴロゴロ、ゴロゴロと地響きにも似た音をたてながらの高速行進。
「はぁはぁ……」
突然のことに女性も参ってしまったのか、さらにその息は乱れる。
流石にこのまま走ってくわけにはいかないか……。
「――超身体強化からの……多重乗斬!!」
万を持して俺はスキルを発動。
少し前にダッシュして距離をとって数多の剣撃でモンスターたちを刻んだ。
すると、やはり防御面は大したことがなくてその皮膚は裂けた。
でも……血が出ない。こいつらの馬鹿みたいな転がる行進が止まらない。
「それに……傷口が治っていく?というか……」
あり得ない速度で、縫われるように塞がる傷口。
アンデッドフェイカーの皮部分、こいつらは本当のアンデッドってことらしい。
確かに、ちょっと腐臭するかも……。




