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260話 相反

「溶解液……いや、単純に熱で溶かしたのか」



 ドロッと溶けたそのゴーレムの身体は赤色に変色をしたかと思えば、またすぐに黒色へと変わった。


 これは金属を熱したときにに見られる反応と似ている。


 よく見れば女性の歯、というか牙の方が正しいか……それも血とは違う赤色を帯びていることも熱による攻撃だということを教えてくれている。



 炎属性の魔法はそこまで珍しくはない。

 だけど、それを用いたようなものではない体温上昇、身体強化とでも言うのか、とにかくこれは見たことも聞いたこともない。


 もしそのスキルを持っていたとしても……普通の人ならそれだけの熱を帯びてまともに戦うのは不可能なんじゃないかな?


 俺みたいに炎耐性を持っていてもこれをあんなに冷ややかな顔で、とはいかないと思う。



 ――ぐじゅ……。



 そんな状態でもゴーレムに動こうとする意志が見えると、女性は容赦なく核を潰した。


 血ではないが、黒っぽい液体が広がる様はなかなかにグロテスクだ。

 ただ、砂や地面にそれが馴染むのがやたらと早いお陰でそんなものを眺める時間は案外短い。



「派手で大技って感じじゃあないけど、強いじゃん。なんというか格上って言葉がぴったしだわ」

「そうだな」



 山吹の感想に頷きながら、俺は止まることのない女性を観察。


 その動きは確かに上位、でもそれだけじゃなくてゴーレムという存在、性能に対して有利……分かりやすく、ハチが理解しやすい言葉でいうと女性の存在がそれをメタっている、っていう表現もできそうだ。



「にしても……足はっやいな、おい。別にこっちのスピードが変わってるってわけじゃないのによ。ま、回収してやる手間が省けるからいいんだけどさ」



 女性はゴーレムを倒しつつも俺たちを追いかけ、時には追い越す。


 これは身体能力の高さによるものだけなのか……。



「――わう……」



 そうしてほとんどのゴーレムを処理した頃、ポチが弱々しく鳴いた。

 さっきよりも身体は冷たく感じる。



「はっ、はっ……」



 それに引き換え女性は汗ばみ、息遣いが荒くなっているような……。


 相反した様子から察するに、ここは俺とハチのように契約関係にあるのかもしれない。


 俺たちがコロシアム付近での暮らしぶりをしっかりと確認できていないだけで、ペットを飼ったりそれと契約するのは案外当たり前のことなのかもしれないな。


 ポチについて誰も疑問に思っている様子はなく、馴染んでいたし。



「――おっ! 全部倒しきったっぽいな! いやぁ! 思いがけず楽できちまったよ! サンキュー!」

「はぁはぁはぁ……」



 そうこうしている間に女性は仕事を終わらせて帰還。


 辺りにはまた静けさが戻ってきていた。


 ただこの様子だと油断はできない。



 ――すさぁ……。



 静かな階層になる砂の音。


 それが鳴ると前を泳いでいたアンデッドフェイカーたちは立ち止まり何かを待つ。

 それに合わせて俺たちも止まり、辺りを警戒する。


 この雰囲気は異様。


 もしかすると、もう階層主が?



「おい! 前が!! なんだよ! ダンジョンの階層移動はこんな風にまでできんのかよ!」



 渦巻く砂、それに飲まれるアンデッドフェイカーたち。


 そして砂の中に埋もれていたのか、上で見たものと似た看板がゆっくりと姿を現し始めた。

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