258話 任せて欲しい?
「えー、右手に見えますのは川。左手に見えますのは砂地……景色変わらずでございます!」
「随分と元気だな。……さっきまでと違って」
「う……。でも空元気でもなんでも声出してかないとしんど過ぎてめいっちまうって。だってあれから『半日』も経ってんだぜ!まったく、簡素な中を一番に変えようって思わなかったのかよ」
アンデッドフェイカーたちの後ろを磁力により移動。
長くても1時間くらいを予想して、神測も怠っていたのが裏目に出た。
待てど待てど階段は見えないし、辺りは次第に暑くなって……立っているのは割りと早い段階で無理だって判断。
しかも肝心要の山吹は目を虚ろにしながら運動、ずっと『腕が! 脚が! 魔力が!』ってうるさくて……。
色々と考えた結果水城を新たに展開。
水に電気を送るのは怖かったが、スキルによって性質が変わったのか、或いはいくら触っても濡れるということがないから目に見えはしないけど仕切りのようなものが存在するということなのか……とにかく磁力を発生させる砂鉄を壁の中に埋め込むことで山吹の腕や脚への負担を軽減。
俺や女性、ポチも座っての移動へと切り替わって大分楽にはなった、けど……。
「流石に暇だな」
ほぼ変わらない景色、罠もなにもなくなにも起きない時間、一向に先が見えないマップ。
神測によると50階層までこのままの速さだと1日かかるくらいらしい。
因みに長旅に向けて食事の回数が少なくすむよう勝手に補完もされて……食べるという暇潰しもあまり効果はない。
まぁそれでもこの道を歩いていくよりは遥かにいいけど。
もしこんなのをまともに受け入れていたら苦痛もいいところだって。
「……。ここはモンスターに襲われるとかそれよりも我慢の修練道で……人間らしい胆力を養う、強化が目的ってとこなのかもな。ま、だとすればそれ以降は――」
「お!ようやっとお出ましみたいだぜ!噂のゴーレムさんが」
また戦闘のそれに切り替わる可能性が高い。
「ゴ……」
「数は15ってとこか……多いな。こっちの数に合わせてる?いんや強さ?……それとも、お仲間を利用してるのが逆鱗に触れちまったか?」
上ではバトルロワイアル形式が主になっているとして、それ以外……ここからは多数対多数の戦場形式が始まるらしい。
「……わん」
これだけの数を目の当たりにしてポチは怖い思いをしてしまったのか、女性に抱かれるその身体をより小さく丸めながら吠えた。
前回の戦闘に引き続いて魔力の消費は大きくなるだろうけど、ここも俺の出番かな。
万が一山吹が深傷を負ってしまえば、移動は大変になってしまうし。
「さて、今度はどう戦ってやろうか――」
「……」
俺が扉に手をかけたとき、女性が俺の手を握ってきた。
さっきは服を引っ張って心配そうに止めてきたけど……今度は違う。
その瞳には涙が見えない、それどころかメラメラと燃えているようにさえ見える。
「もしかしてだけど……自分に任せて欲しいってこと?」
「……」
俺が質問すると女性は強く頷いて、俺の手ごと扉を引いたのだった。




