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257話 あばば

「あいつらはここに残る様子も他のモンスターももう襲う様子はねえ。つまりは、あとは主のところに急いで帰るだけ。……これを使わない手はないよな」



 山吹はそそくさとこの場から逃げようとしていたアンデッドフェイカーたちに早くから目を付けていたらしく、そいつらのヒレが揺れる方角を指した。



「あいつら襲ってこないからビビったままだと思ってたのに……。こっそり逃げようとして……ってなんか遅くないこ?」

「いんや。むしろ速い。俺がS極とN極に、地面にある一部の砂鉄とあいつらについてる砂鉄を反発させてるってのに……馬鹿力過ぎて止まらねえ」

「……本当に色々できるな、お前」

「へへへ。それだけじゃなくてな、この磁力とあいつらのスピードを使えば……」



 昔の漫画さながらに鼻の下を擦ると、山吹は電磁浮遊状態の俺たちの肩に腕を回した。


 よく見れば両手に砂が握られ、ポケットにもごっそり。


 これって多分そういうことだよな?



「いいか? 絶対ポチを離すなよ」

「……」



 山吹の注意を理解したのか、女性はポチを抱き締めてこくりと首を縦に振った。


 さっきまではこんな反応はなかったはず。

 声……は今も発しなかったから気のせいだとしても、何か様子が変わった気がする。


だとすれば原因はなんだ?



「――じゃ、行くぜ! 『再電磁石化(リ・マグネット)』……ポイントオン!」



 山吹の合図で急加速する2匹のアンデッドフェイカー。


 それに引っ張られるように俺たち、というか山吹が前進。



「う、おおおぁ!」

「……」

「わわわわわわわわわわうううん!!」



 信じられない速度の移動に思わず声が出てしまった。


 少し恥ずかしいけど、ポチが犬らしくない面白い声で鳴いてくれたおかげでやや緩和され……。



「……」



 ない。

 だって女性の冷ややかな視線がどう見てもドン引きしているようにしか思えないんだよ。


 というかこの人このスピードで無表情ってどんだけだよ。

 俺もポチも……



「あばばばばばばばばばば!!」



 山吹だってギリギリ口を防いでいられるくらいの速さだっていうのに。


 それにこの砂と灰が微妙に舞い掛かってくるからしんどい。


 灰に関していえば、アンデッドフェイカーの骨粉も混じってるかと思うとなかなかに気持ち悪いぞ。



「――!? っと危な……」



 この揺れと速さで種がポケットから飛び出していきそうになったところをキャッチ。


 種はバックの中にしまった方がよさそうだ――



「ん?」



 改めて取り出した種、それを見て変化に気付いた。


 麦飯みたいに縦に線が入って、膨らんだ?

さっきまではなにも変化はなかったはずなのに……。



「……。もしかして、灰?いいや、アンデッドフェイカーの骨か?」



 女性の変化と種の変化。

 その2つを照らし合わせて俺は答えを出そうとする。


 ただはっきりとしないのは、まずアンデッドフェイカーの骨にその効果がある理由が分からないから。


 こいつらはどうやって生まれ、使役されているのか……。


 そしてはっきりとしない理由のもう1つは……。



「あばばばばばばばばばば!! これならもっと……いけ……あばばばばばばばばばば!!」



 このスピードとそれに対応できていない山吹の顔と声があんまりにも面白くて頭が回らないから。



 ……また吐かなきゃいいけど。

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