255話 派手で下品
合図と共に全ての翼が同時に羽ばたく。
それは煌めきながら止まっていた剣を進ませ、食い込ませ、まるでアンデッドフェイカーを侵食していくよう。
そうした時間が1、2秒ほど。
ある程度深く食い込むことが確認されると炎の翼は羽ばたきと共に次々と集約。
高く伸びていたのが大体半分くらいになった。
そして最終的に巨大な二つの翼携えることになった炎の剣は、そこからもう1度だけ翼を大きく羽ばたかせる。
するととてつもない風が巻き起こり、炎の剣はアンデッドフェイカーの骨を分断……はしなかった。
「あ゛っい゛!!」
「さっきまでは食い込んだだけ、だけど今度は本当に侵食する。何千もの炎の鳥が姿を変えて」
高く伸びていた炎の剣が巨大な翼によってどんどんとアンデッドフェイカーの中へ入っていく。
熱いのか痛いのか、或いは両方なのか、肉だけでなく痛覚さえも忘れていたっておかしくないその身体でも、まだ五感は働いているようで、大きくて情けない声が階層内に響き渡る。
これを聞きつけてか、それとも死体をハイエナしてやろうって魂胆なのか分からないけど、残りの2匹は見学を決め込んでいる。
なんだか嬉しそうでわりと胸くその悪い光景だと思うけど……それもすぐに終わる。
「だってここからが俺の目的。フィナーレになるんだから……『バースト』」
俺の言葉が解放の合図。
炎の鳥に侵食されたアンデッドフェイカーはその身体を赤く、そして膨張させて……。
――バンッッッ!!!
爆ぜた。
瞬間の光はオシャレに翼を広げた鳥の姿を模し、舞い散るアンデッドフェイカーの灰は羽のようにヒラヒラと落ちて命が失くなった切なさを演出する。
「俺にしては派手すぎた決着かもな。綺麗だけど、見せびらかすみたいで下品――」
「……っ!」
「わん!」
その景色を眺めているとポチと女性が凄まじい勢いで駆けてきて、俺の背中に突撃。
ポチはまだしもそのあともポコポコ叩く女性の拳は結構痛い。
これ相当強いぞ。
体感的にアンデッドフェイカーと同じくらいじゃないかな?
「なんだ、やっぱり敵じゃないんじゃないか。分からないけど……ま、理由があるってことがわかっただけで収穫だよな」
「おーいっ!!」
なんとかなく喜んでくれているんだろうな、と思いながら2人を眺めていると山吹も嬉しそうに近寄ってきた。
しかもその背中にあの獣戦士を担いで。
「やっぱ強えな!! いや、分かってはいたんだけどよ!」
「痛い! 痛いから! なんかピリピリするし!」
「あ! 悪い悪い! ちっと力入っちまった!」
力加減を知らない山吹の一撃。
ここ最近の中でも1番反応がいいな。
本当は剣技での戦闘が好きなんだけど……これからのことを考えると支持を得るために派手な戦い方を開拓していくことも一考か。
帰ったら陽葵さんに相談してみよう。
「――まさか、こんなに強いとは思わなかった。これなら……こいつらがついていっても問題はない、かもしれない」
さっきまで話すこともままならない様子だった獣戦士は、誰かに治療でも受けたのかある程度話すことができる状態まで回復しているようだ。
それに……なんだか女性に対して甘くなってない?




