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254話 スキル成熟

俺は剣を腰よりも下に落として、その先を敵のいる方向とは反対に向ける。


 翼でできた鍔は赤く光、いかにも強力な一撃を放ちそうだが、これは攻撃の準備じゃない。



「うん。エンジンはいい感じ。あとは操作性がどうかな」



 握る手に力を込めると、赤い光はより輝き、ついには鍔から炎が噴射。

 その反動によって俺は前進を始める。


 電磁浮遊のおかげでこれに合わせて脚を動かさなくても高速スライド。

 足腰への負担は分からないけど、走った時と比べて呼吸のつらさは少ない。


 例えるならスキーやスノーボードのそれ。


 技術的なものは必要だけど、勝手に進んでいく爽快感はたまらない。


 握りの強さ、鍔の角度、これによって速さと方向を変えながら俺は砂の弾丸を避けて一気に爆炎の中へ。


 ゲーム感覚での攻略は楽しいけど、一先ずそれはここまで。

 ここからは陽葵さん譲りの剣撃でその傷を攻めてやる。



「!?」

「雑に振ることでそれが大きな隙になるのは必然。小回りが利く相手は苦手か? それとも自分が死角から襲われるのは初めてか?」



 炎の噴射を完全に止めると、俺は砂の中に思いきり剣を突き刺したまま砂の弾をギリギリで回避。勢いそのままに低い体勢で走る。


 すると爆炎で視界が悪いこともあいまって俺の姿や剣が見えなくなったのだろう、アンデッドフェイカーに気の緩みが表れた。


 ここまで距離を詰められたのだから、もっと注意するのが普通。

 ただ自分は絶対強者であるという満身がこの環境の中で生まれて、首を締める。



 俺が懐に潜り込んだことに気付くことはできたが、もうそれを避けるだけのなく、アンデッドフェイカーはただ驚くばかり。


 炎の剣は簡単に黒いひびに当たって、刀身をめり込ませる。



「うっ……それでもやっぱり硬い」

「ぐ、おっ……!」



 めり込んだまでは良かったが、それ以上剣は前へ進んでくれず、そうしている間にアンデッドフェイカーはその尻尾で俺の身体を叩き、さらにはそのヒレで炎の剣をかき切った。


 一見絶体絶命万事休す。


 だけどこのくらい、破れかぶれで叩かれたくらいでダメージを負うほどのレベルに俺はないんだよ。


 それに傷に剣をあてがわせた……いいや、傷を作らせてしまった時点でこいつの負けは確定している。



「残念だけど、俺のその剣は不死鳥の一振。切られたくらいじゃ死なないのさ」



 アンデッドフェイカーの身体に食い込んだままの炎の剣、それは消えることなく燃え続け、消えるどころか光を蓄え出す。



「再生。辺りの同種さえも巻き込んで、取り込んで。二翼四翼十六翼……」



 手をかざし、炎の剣の効果の1つである『同種混合再生』を発揮。

 これによって『剣生成:成熟』だけではできなかった無数の素材よる剣が構築される。



「ぐ、うぅ……」

「お前には重力の影響がないみたいだったから、最後に単純な物量でこの重さとつらさを感じてもらえて良かったよ」



 アンデッドフェイカーの口から漏れでる悲痛の声。


 それもそのはず、俺が炎の剣の効果を発揮させたことで食い込むその刀身は剣自体を完全に復活させるだけでなく、何百……何千もの翼を携えてしまったのだから。



「不死鳥というより、鳳凰に見た目は寄ったかな。見世物としてはちょうどいい……豪華絢爛に散れ」

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