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250話 見え方

「……」

「お、おい! お前まで! くそ! ポチが行くってなら当然行くしかねえよ!」



 流し目で山吹を見つつ、女性が走り出した。


 そしてそれに山吹もついていく。



「遅かれ早かれこうなるのか……」



 そんな光景が目の前に映れば俺だってここに居続けるわけにはいかない。


 グループとしての判定がどこでどのように行われるのか分からないこともあって、俺は疲れた身体に鞭を打つ。


 階段は急でざらざらとした黒っぽい砂が多くかかっている。

 そのせいか、踏ん張りを利かせようとすると、少し足裏がくすぐったい。

 長さはさ程でもないのか、すでに先から光が差し込んでいるのが見える。



 神々しくてオアシスでも広がっていそうな光だけど、さっきの悲鳴からしてこの先は地獄。


 重力、モンスター、或いは両方。

 それらがイレギュラーな事態に発展している場合、きっとポチはあっという間の天国行き。



「だからまずは俺が先行するべき――」

「いいや。その役は俺の担当。案内人が案内される人間に先行かれるのは流石に面目立たないってえの」

「でもお前が先に出ていってどうにかなる状況か分かんないだろ……」

「いやいや大丈夫大丈夫!なんならこんなにも適任はいないって! 『あそこ』ならスキルを最大限活かせるし、機動力も人一倍! だから重力についてと、『モンスター』の位置については任せろ!」



 あそこ、モンスター……。

 電気での階層把握なんていつしてたっけ?

 というかできないみたいな感じじゃなかったか?



 まあ、スキルについては秘密の1つや2つあってもおかしくはないし、態度とか見るに隠しているというよりかは説明してないだけっぽいし……今は問い詰めている時でもない。



「――電流増し増し磁力強化、纏電反転。反発力急上昇っ!!」



 山吹の足元に大量の電気が流れ、キラキラと輝き始めるとその身体はふわりと浮いてバネのように一気に跳ねた。


 それによる速さは異常で、あんなに速かったポチを山吹は一瞬で抜き去った。



「がああぁ……」



 するとやはりなにかモンスターがいたようで、鳴き声が聞こえてきた。

 だけどそれは遠い。


 どうやら入り口からモンスターを引き離してくれているらしい。


 流石に自信があっただけあるな。


 といっても俺たちが42階層に入らないと重力は山吹だけにかかる。



「急いでやらないと……流石にしんどいだろ」

「わ、わん!」



 突然の出来事に足を止めてしまっていたポチを俺は拾い上げて俺は女性と共にようやく42階層に侵入。



「う、ぐ……」



 すると突然身体が重くなり、眩しさも相まって瞼は半開きに。


 段書んの深い層とは思えない太陽の煌めきと、うねりながらどこまでも続く川、砂漠よりも黒さのある砂が敷かれた地面。



 そして……。



「……」

「わん……」



 手や足をもがれた獣戦士の仲間と、さっきまで元気いっぱいだったはずの獣戦士が地面に突っ伏して血を流していた。



「だ、大丈夫か!?」

「あんなの……知らない。見たことなかった、のに……」

「……」



 今にも意識が消えてしまいそうなほどか細い声。


 それを聞いた女性は確かににやりと口角を上げた。


 でもその瞳は潤み、笑顔とはまったく違う顔をしているように俺には見えた。

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