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249話 わん!

「それが階層のルール変更、改変による影響……。でもそれだけでそんなことができたって決めつけるのは早すぎるんじゃないか?」

「そうして1人2人……入り口にたどり着いた頃には俺とこいつだけしか残っていなかったらどうだ?」



 俺の質問に質問で返す獣戦士。


 その顔は当時のことを思い出しているのか、元々の強面がいっそう険しいものになっている。



「それは……。疑うのは仕方ないと思う」

「だろ。しかもこいつ、言葉が出ないからかわかんねえけど、仲間が死ぬ度にほんの少しだけ広角が上がったように見えて……。何より死んだ仲間を食ってやろうって意思を感じなかった。あの時のこいつの姿はまさに死神。ここに住むモンスターとしてのプライドを感じはなくて、ただ殺すことを楽しんでるとしか思えなかった。それで……弱かった俺はそれを眺めて、自分の番が回ってこないことを祈りながら急ぐしかなかった」



 血が出るほどに拳を握り締める獣戦士。


 死んだ仲間を横目に逃げ帰っきたその過去によっぽど後悔があるようだ。



「だから俺は強くなった、それでもって警鐘を鳴らした。今みたいにこいつには構うなって、絡まれないようにしろってな。まぁそれでも被害がゼロにはならなかったんだが……。せめて、こいつが42階層を突破してくれりゃあ……。とにかく、だ。俺は注意したからな。無駄死にしたくなけりゃそのなよっとした身体を鍛えてもっと多く仲間を連れてくるこった」



 そう言い残すと獣戦士は暇そうに待っていた仲間にハンドサインを送って42階層へ向かっていった。


 パッと見はこ悪党だったんだが、普通の人間よりお人好しだったな。



「それにしても……。なんでそんなことを何度もしたのか……それも全部種のせいなのか?」

「さてね。ま、なんにせよ怪しいもんには関わらないべきだろ。重力がどれくらいのもんなのかは俺のスキルでも推し測れそうにねえし」



 山吹はその目を細めて女性を見た。


 今の話を鵜呑みにしたわけではないのだろうけど、疑心が表に出すぎだな。



「――ワン!」

「いや、だからそれは無理だって結論になったんだよ」



 それでもなおポチは山吹のズボンの裾を引っ張る。

 まるでこの女性を42階層に連れていけって言っているように。



「なぁおい、こっちの女の人はなんにもしてこないからいいにしてもよう……」

「……。ま、連れていっても攻略に問題がないって判断できれば構わないわけだから……神測」



『42階層の重力を神測。……。スキル主1人による耐久が可能なレベルです。またグループ内の探索者においても電気スキルを用いることで1人での攻略が可能。ただし運動量が飛躍するため、休憩所を設ける必要あり。……契約モンスターのスキル情報取得。水壁による隔離空間の生成が可能になりました。スキル:【水城】……』




「――うあああああああああああああああああっ!!」




 神測のアナウンスに耳を傾けていると、階段の先から絶叫がこの場所まで轟いた。


 この声はさっきの獣戦士?



「……」

「わん!!」



 そしてその声にぴくりと女性が反応すると、たまらずといった様子でポチがたった1匹で駆け出していった。

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