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244話 白髪

「ここは……やっぱりまだ争いは続くのか」

「……いんや。どちらかというと協力しているように見えるぜ。ほら、あっちなんか筋トレ仲間で群れてやがる、それに、向こうは……」

「治療中か?」



 扉をくぐり抜けると、小部屋がいくつも立ち並び、なにもしてこないやたらとがたいのいいモンスターたちが待機していた。


 黒豹戦士のしていた仕事が自分まで回ってくるのを待っているのだろうか?


 ただ、それだけにしてはやけに騒がしい。


 それでいて、仲良くふれ合っているようで……とりわけ脚や腕に包帯を巻いたり、ポーションのようなものを飲ませたり、またそれを見て勉強しているような光景は異様。


 今まで仲間を気にするようなモンスターはいたけど、それを治療したり、そのための知識を広めたりまでするなんて……それだけのことをしないといけない何かでもあるのか?



「――わん!!」

「え?」



 えっと……普通の犬にしか見えないモンスターが1匹いて……人間の家みたいな雰囲気まであるのか。


 いや、油断は大敵。

 レア個体で実は危険かもしれないから一応神測しておくか。



『ほぼ犬:ポチ。対応可能レベル1。犬に好かれる体質を獲得することで有利相性を補完』



 スキルによる圧は効かないというか必要なく、神測によって視認した対応可能レベルも著しく低い……マジの小型犬じゃんこの子。


 強者しか通さない、生き残れないシステムがある中でどうやってこんな場所に普通そうな犬が?


 うーん……分からない。



「ヨシヨシ」

「わう!!」



 しかも獣戦士タイプのモンスターたちに可愛がられて……完全にペット。


 犬顔猫顔に撫でられる本物の犬……かなりシュールな絵面でちょっと面白いかも。



「……わう!」

「わっ、おい! お前! 急に、そんなに引っ張るなっての! お、おい!」



 ついつい可愛らしいその犬に目を奪われて進む脚が遅くなってしまっていると、そんな俺たちに気づいたのか犬は愛想よく走り近寄ってきた。


 そして構って欲しいのか山吹の服に噛みついて強めに引っ張る。


 まぁあれくらいなら洗濯すれば伸びは戻るかな。



「わう!」

「なんだよ?今度はこっちにこいってか? ま、42階層はそっちであってるからいいんだけどよ。まったく、ちょっとくらい休ませてくれたっていいのに」

「俺は休まなくても大丈夫だけどな。むしろ可愛い子犬と戯れてるこの時間は休憩みたいなもん」

「そりゃあんたは戦ってないからいいかもだけどよ……っておーい! 待てって!」

「なんだかんだ言って構ってやるのね」



 俺たちがついてきているのが分かったようで犬……ポチは一気にスピードを上げた。



 流石に犬、速い。

 それにスタミナもある。



 に、にしてもマップで見るよりこうして走ってみると道が長く感じるな。


 少し息が……。



「――はぁはぁはぁ……ま、待てって」

「はぁはぁ……」



 うん。前言撤回。

 まったく大丈夫じゃない。


 レベルが上がろうとも突然の持久走大会に対応できるほどの若さはもうないんだよな。


 先も回りも見る余裕すらな――



「わん!」

「つ、着いたのか?」

「はぁはぁはぁはぁ……こ、これは?」



 走る身体を徐々に減速させ、両手を膝におく。


 そうして息を整えながらやっとの思いで顔を上げると、そこには立て看板と……。



「ひ、人?」

「な、なんだってこんなとこに?」

「……」



 無言のままで立ち尽くす白髪の女性がいた。

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