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240話 変毛

「が、う……」

「お、あれでまだ動けるのかよ。心意気だけじゃなくて前にざっくりと読み取った種族情報のパラメーターも越えてるっぽいな。はてさて、そのスキル次第じゃ俺の子分候補だぜ、お前」



 ――ぶち。ぶちぶちぶちぶち。



 よろけた身体で1歩2歩後退すると、ワーウルフは自分の胸の毛を痛そうな顔で抜き始めた。


 気でもおかしくなったか?

 いや、この顔をするやつが考えもなしにこんなことはしない。



「モンスターのスキルを神測」



『……。発動されたスキルは【物質変毛(ぶっしつへんげ)】。体毛を特定のもの、形に変化させて主に攻撃手段として用いられる。……対策の1つとしてこれにより作られたものとそうでないものの見分けができるようスキル主を新たに強化、補完しました』



 毛を攻撃手段に、か。

 あ、ということはあの量が一気に……。



「ふっ……」



 毛を軽く吹いて飛ばすワーウルフ。


 そしてそれは段々と飛行を始め、形は先端の尖った矢へと変わっていく。


 一瞬にして作られたところを見るにこいつが階段で俺たちを襲った張本人で間違いなさそうだ。



 ただ確かに強力で便利なスキルではあるけど、山吹がこれを防げるのはもう分かっている。

 事前に設置されているわけじゃなければ問題はな――



「があっ!!」



 ワーウルフが両手を前に出して、まるで指揮をするかの如く腕を振り始めた。


 すると矢は自由自在に空中を飛んで……順々に、様々な角度で山吹を襲う。



「まずい!」



 慌てて俺は一歩。

 だけどこの矢の速さじゃ間に合わない――



「ちゃんと見えてるんなら俺だってこんなのわけねぇんだよなあ!! 電気推進(エレクトドライブ)



 バサバサバリバリ、やかましくはためき出した電気の服はそれを推進力としてなのか山吹の背中を押し、靴は地面を気持ちよく滑らせていく。


 そうしてスピードスケートのような体勢から加速した山吹は初撃を避けると、さらにワーウルフへと迫る。



「がっ!?」



 地面に刺さり、情けなく炸裂した矢は黒い煙を上げはするものの、ここが階段通路と違って開けた場所であることからあっという間に霧散。


 これを見たワーウルフは腕を振ることは止めないまま、陽気に、踊るように後退。

 それでこれが結構速い。


 どれだけ山吹が速度を上げてもこのままじゃ矢が当たるのは時間の問題。

 でも少し猶予が生まれたなら俺が参戦できる。



「神測――」

「ポイント視認。マガジンセット! 轟け俺のセルフダブルライフル! 『電指砲台』」



 山吹は俺のことなんか眼中に入れず両手を銃の形にした。


 そうすると、服から手に電気が一気に流れ込んで……。



「バーンっ!」



 無邪気な表情の山吹の声と共に指の先からそれは放たれる。


 何発も何発も矢が次々に炭となって消えてしまうくらい何度も。



「ふう……。どうする? お前も1発撃たれとくか?」



 そうして山吹の弾が尽きるよりも先に距離を詰められたことで、指の銃口はワーウルフの額に触れた。


 ワーウルフからすれば絶体絶命。


 それなのに、依然としてその目には絶望の色がさすことはなかった。

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