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24話 体内

「……」


 結局全身をハチに飲まれてしまった。

 裏切った……というわけではない。

 身体は動くし、喋ることもできる。竜たちと同じく、ハチの中に取り込まれたということだろう。


「完全に外と遮断された世界。ここにいるだけでダンジョンを進めると思えば、こんなに楽なことはない。だが……少し匂うな」

『に、匂いって……。しょうがないでしょ! 体内に留めているんだから! 奴隷サーバントでも、モンスターでも、私はレディなんだから、もっとデリカシーを持ちなさいよね』


 レベルアップやスキル取得、神測と同じように頭の中にハチの声が流れ込んできた。

 体内にいても意思疎通は問題ないようだ。


「ああそうだな。悪かった。それにしても凄いな。こんなこともできるなんて」

『ご主人様はもうユニークスキルの対象になっているから、他の子たちができることは全てできるわ。気体になることも、慣れてくればできる……はずよ。そ、それと、このスキルは生き物以外なら契約がなくても意思決定だけで、道具も取り込めるのよ!』


 急に歯切れが悪くなったな。

 明らかに動揺しているし、ハチの奴……。


「『はず』とか『試す』とか……。もしかして俺、知らない間に危ない橋を渡らせられていないか?」

『そ、そんなことないわよ! ま、まぁ、でも最悪のことが起きても8匹の内、誰かが生きていれば生き返ることができるんだから、そんなに気にすることないじゃない! あ、はは。そ、それより、私たちはもう主従にあるから念じるだけで会話ができるわ。体内で声を発せられると、振動でむず痒いから話しかけるときはそれでお願い』

『……。契約か。それについても聞きたいことがあるんだが……。契約とは誰にでもできるのか? スキルとは違うものなのか?』

『……特別なものだけに許された権利よ。魔法やスキルとは違って反動もなければ、レジストされることもない。つまり、私たちとご主人様は一生一緒ってこと。嫌、だった?』

『嫌じゃないさ。こうして生きていられるのも契約のお蔭だからな。だが、そうだな。嫌だと思っていることはある』

『な、なに? もしかして、また匂いとかって言うつもりじゃ……。確かに食事を終えたばかりでちょおっとあれだったかもしれないけど――』

『そうじゃない。嫌なのはご主人様という呼び方だ。なんだ、その、ここ何年か馬鹿にされていたからな。急にそんな風に呼ばれると……むず痒い』

『……。あはははははっ! くそ真面目な見た目や話し方でただお堅い人間だと思っていたけど、可愛らしいところもあるのね。それで? なんて呼べばいいのかしら?』

『俺の名前は並木遥。並木とでも――』

『じゃあ遥……様でいいわね。ふふ。改めてよろしく。さ、そのうち水路に入るわ。ちょっと揺れるから気を付けて』

『様……。お前、まだからかって……。まぁいいか。それにしても、ハチの縄張りに入ってからまだ1日も経っていなかったのに……。ここは人間が未踏の地。もう少し探索してみたかったかもな』

『1日……。そう、そういう感覚なのね、遥様の中では』

『それはどういうことだ?』

『丸5日。それが遥様の眠っていた時間よ。ほら、一緒に飲み込んだスマホの数字、遥様がダンジョンにやってきた日にちとは違うで――』

『あ、これって』


 ハチの言葉を聞きながら、近くに転がっていたスマホを拾い上げると、俺の目には日付、時刻よりも先に、自分が死んだというニュースが飛び込んできた。

お読みいただきありがとうございます。

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