237話 41
「――41階層のモンスター数、神測」
「情報電気網」
それからしばらく、ようやく山吹の容態が良くなり俺たちは本格的に探索に入ることにした。
まずこの先の情報を得るためにお互いスキルを発動。
おそらくそこまで強い野良のモンスターはいないと思うけど、赤が下は40階層にいても騒がしいときが度々あったとか言うもんだから一応慎重に進もうというのが事前の打ち合わせだ。
『――41階層のモンスター数、成長途中個体含め400。多種族多武器。あらゆる種族の気配を察知できるよう、直感力を向上。マッブを作成。モンスターの数が多いためその書き込みは不可。補完完了』
「400……。そんなに広いのか41階層って」
「こっちも完了。情報を流すな」
「あ、ああ頼む」
神測の結果といつもより大きく見えるマップの表示で呆気にとられていると、山吹が電気を纏わせた手をそっと近づけてきた。
以前この階層について情報を仕入れていることもあってか、山吹はなにも驚いた様子を見せない。
「よし。これでok!罠も多いが、地形も大分変わってくるからとにかく足元と上に注意な。で、俺のほうがそういうのは得意というか、気付けるはずだし、高低差のあるこの地形を歩くには少しでも詳しいやつが前のほうがいいと思うから、案内役って立場に違えないよう先頭行かせてもらうな」
「じゃあ俺は俺で一応マップを見ながらサポートさせてもらうか」
「頼むぜ!ただあれがどれだけその余裕をくれるか……」
柄にもなく少し不安気な山吹。
おそらくだがこの先、50階層近辺にも竜はいる。
流石に今の階層からじゃ、その詳細なりなんなりを神測することは難しいようだけど、この様子だと山吹はもうその存在をなんとなく知っているのかもしれない。
「それじゃ、進むぜ」
緊張感漂う中、ようやく階段に足をかける。
思えばこんなにも本格的な探索って久しぶり――
――ひゅっ!
「矢!? ふ、伏せろ!!」
僅か10段ほど下っただけだってのに矢が飛んでくるなんて……。
早くも罠が作動したってわけか。
モンスターの種類についての詳細を知るための神測をしてなかったが、これはゴブリン並みに頭の回るモンスターたちが蔓延ってそう――
――パリ……。
「ちっ……。やっぱり、そんなしょうもないもんで終わる分けねえよな。ここの猛者どもはよう!! 簡易電気障壁!!」
山吹の張った回路が矢に反応したようで、矢に一瞬電気が纏った。
すると山吹自身は伏せることなく両掌を前に出さて、小さくも電気のバリアを張った。
大掛かりな電気のスキルが使えるのだから当然これくらいはできると思っていたけど、かなり器用で判断もいい――
――ドンッ!!
「けほっ! ば、爆破の矢か」
「煙で前が見えねぇぞ!」
感心していると、矢はバリアに当たり……炸裂。
黒い煙が上がり狭い階段通路はあっという間に最悪の視界となってしまった。
しかも、矢の音はまだ消えてない。
――ひゅう
「見えないんならもっと出力上げてバリアをでかく……」
「上を通りすぎた?」
さっきよりも音に鋭さがない矢の音はやけに小さく、さらに小さくなりながら上方で鳴る。
これは、俺たちを狙っていない?
――ドンッ!!
音は小さくても爆発の威力は変わらないようで、矢は盛大に炸裂。
しかもそれは俺たちの背後で。
「これは……」
「ああ。やられたな」
それによりがらがらと崩れ落ちる入り口側の通路の天井。
相当派手に矢が炸裂したこともあってか、帰り道を塞ぐこととなったこの瓦礫は山のように多い。
魔法でこれを吹っ飛ばすことはできるだろうけど……。
まだまだ矢の音は消えてないんだよな。
しかも今度のは上からも下からも……ほぼ全方向から聞こえて、そんな魔法を発動する暇はなさそうだ。




