235話 スキル名は?
「もっと深い階層……。なんでそんな階層をお前が案内できるんだよ。オロチの、ハチがいた階層だって俺が到達するまでは確認できてなかったはずだぞ。まぁこの辺はあくまで表向きの情報では、だけど」
危険度はもちろん、持ち帰るその手間を考えると浅い階層のみの探索だけで十分だと考えられていた。
それだけ浅い階層にはモンスターや特殊な植物、鉱石に満ちている。
それでも深い階層に向かうとのなんて、俺みたいにレベルを上げたくてしょうがなかったとか、どうしても欲しい鉱石とかモンスターの素材があったからとかだと思うけど……そもそも、俺も知らないような深い階層に何があるのかなんて知らないのが普通なんだよな。
「こ、これもスキルでさ!詳細なのは当然無理だけど、大体これくらいの強さのやつが複数でいるのか、単独でいるのかくらいは分かんだよ!」
「……。山吹のスキルが優秀なのも、神宮の痕跡を探してたのも理解してる。その結果お前が敵じゃないってことも、少し変わったやつだってことも。そんなに焦らなくてもこれ以上詮索はしないから安心してくれ」
「……。ふへ、なんだよなんだよ。なんだかんだ俺もこのチームの仲間入りか?かぁ、しょうがねぇなぁ。こんだけ認められたら断れねえよ」
自慢気に赤とハチを見る山吹。
こいつ、甘やかさない方がいいタイプだな。
いつか調子乗って死亡フラグ回収しそう。
「はぁ。まぁいいや。とにかくそうと決まれば準備して……今回も俺と山吹だけで探索かな」
「え!?私は!?」
大袈裟に驚いて見せるハチ。
目がうるうるして今にも泣きそう。
俺いじめてるわけじゃないんだけど。
「今はモンスターの契約補助が少しでも多い方がいい。特に強いサポーターはな」
「でも遥様は神測しないとじゃないの?」
「事前に済ませられるし、時間もかからない。今回山吹と探索に行けたのも案外俺の役回りが楽だったからなんだよ。だから暇潰しだと思って気楽に行って来るつもりさ」
「そ、そう……」
しょんぼりするハチ。
俺がいなくて寂しいのか、それとも俺の作る飯が食べれなくて寂しいのか。
「さて、となれば明後日には出発しようか。赤、移動は手伝ってくれるか?」
「いいですけど、明後日?」
「ああ。言ったろ準備しないとって。だから明日は山吹にそれを目一杯手伝ってもらって、で探索はそれから」
そういって俺は山吹を見た。
すると身体をびくんと跳ねさせる山吹。
いい反応だ。うん、やっぱり厳しめにしたほうが面白……良さそうだ。
「……。あのう、俺今すっげえすっっっげえ嫌な予感がしたんだけど……。なぁ俺たちもう仲間だよな?ひどくしないよな?おい、並木遥!!」
「……」
「なんで黙るんだよ!!」
焦る山吹を見て寂しそうで、不機嫌そうなハチも少しにやつく。
赤も笑いを堪えてる。
これはちょっと可哀想?
「あ、そんなことよりスキルの名前くらいは分かるんだろ?わざわざ深いところまでいくんだから少しでもモチベーションは上げておきたい。だからそれは教えてくれないか?」
「あー、でもそんなにテンション上がる名前じゃないぜ。えっと……『分配』だってよ」




