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233話 びくん

「う、身体がビリビリして……」



 山吹がスキルを発動すると陽葵さんの身体に回路が浮かび上がり、強く光った。


 さらにびくんびくんと上半身が痙攣、仰け反ってつらそうな声を漏らす。


 俺の時はダメージを感じなかったけど、耐性が弱いとそれなりに痛みはありそうだな。



「大丈夫ですか、陽葵さん」



 心配になり、俺は陽葵さんまでそっと自分の手を伸ばす。


 多少でもこっちに電気が流れれば辛さが軽減されるかもしれない。



「あ、ありがと――。あっ……!」



 声に気づいてくれたようで、陽葵さんから俺の手に、触れてくれた。

 すると俺にも電気が流れて少しだけ痛みを感じ、陽葵さんは堪えていた声が漏れてしまったからなのか恥ずかしそうに顔を赤らめた。


 光は消えたけど、これでスキルがインストールされたのかな?



「陽葵さん、スキルは?」

「う、うん。大丈夫、ちゃんとアナウンス流れたから」



 依然恥ずかしそうにその綺麗な手で顔を覆う陽葵さん。


 そんなに照れられるとこっちまで恥ずかしくなりそうだ。



「大丈夫そうなら一回試してくれよ! これ、結構面白そうなスキルなんだ! ちくしょう、俺も条件整ってそうなのに……なんでか使えないんだよな」

「じょ、条件……気になるけど、分かったわ。もし危ない効果があったりしたら、分かってるわね」

「真っ赤な顔で言われるとマジで怒ってるみてえでちょっと怖えよ。ま分かった、初めてご利用の方には手厚いサポートが必要だもんな」



 商品販売の宣伝文句みたいなことを言いきると、山吹は残っていた弁当の中身をかき込んで一気にお茶で流した。


 どうやら山吹なりの準備万端の合図らしい。



「スキルは想像だとか気持ちで姿を変えるタイプ。しっかり集中すればコントロールも効くようになるはず」

「みたいね。ふぅ……。……。……。早着替え(ドレスアップ)」



 陽葵さんは息を整えて、赤らんだ顔にやや冷静さを取り戻した様子を浮かべながらスキルを発動。


 だが光ったり、辺りになにか影響を及ぼすようなことはない。


 変化は確かにしているようだけど。



「あれ? 何か変わったか?スキルは発動しているっぽいんだけどな」

「んー? 陽葵が変わるスキルなの?」



 首を傾げるハチと山吹。


 この二人は普段から人を観察するタイプじゃないからきづかないのかな?



「変わってるだろ。ほら、綺麗なネイルになってる」



 陽葵さんの右人差し指の爪には目立たない程度にピンクに塗られ、それに馴染むよう花柄の装飾が施されていた。


 道場に通っていた時ほど外見にお堅いイメージはないとはいえ、戦闘を行う仕事についているからなのか、ここまでのおしゃれを陽葵さんはしていなかった。


 だから俺からすると、これって結構な違いに感じるんだよな。



「……ちゃんと見てくれてるのよね、やっぱり」

「陽葵さん?」



 軽く俯く陽葵さん。

 ヤバい。今の気付きはむしろ気持ち悪く思われたか?



「だ、大丈夫! なんでもないの!それよりこれ、もっと鍛えれば鎧とかを他人に着せてあげることもできるみたいなの。発動にかかる時間も体力も大したことはないみたいだから、案外今度の戦いには――」



 焦った様子でスキルの有用性を説いていた陽葵さんは、急に言葉を途切らせた。


 もしかしてスキルの反動が!?



「大丈夫ですか、なんだか顔色が……」

「スースーする。これって……嘘。確かによく思われたいって考えたけど、そんな変な想像はほんのちょっとだけだったのに……」

「あ、あの――」

「私、ちょっと席外すわね!」



 陽葵さんは自分の身体をペタペタと触った、かと思えば病室を飛び出ていった。


 大事じゃなければいいんだけど……。



「陽葵どうしたのかしら?」

「なぁ。ちなみに俺はなーんもしてないっぞ」

「はぁ……。ハチちゃんも男2人も鈍いわねぇ」



 ため息を溢す赤。

 いや、お前も男だよな?



「ま、いいや。本題の神宮のスキル。これをインストールする。結構な仕事だからよ、ちょっと覚悟してくれな」

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