232話 まずは
「ん、ぐっ……。ぷはぁ! おいおいお前ら節操無さすぎだろ! まだ飯の最中だろうがよお! その話はこの熱々の唐揚げを食いきってからにしてもら、えりゅとうへひい……」
「スキルの効果を聞いた限り、それは私たちにも被害が及ぶ可能性がある。だとすれば、めひを食べていりゅじきゃんだってもっていやい! 確認はいっひょくをあらひょう!」
「んーっ!! 唐揚げはやっぱりレモンをかけて食べるのが最高!!」
「「――それは認めひゃい!!」」
みんなしてはしたなく唐揚げを頬張って会話を……進めているような進めていないような。
ギリギリなにか言っているのか分かるから、当人が深刻に話しているつもりなのも分かるけど、どうしたって面白い。
ハチと赤と山吹、全員大人なんだけど子供がじゃれて遊んでるみたいで可愛らしさもある、和む。
というか、ハチの奴レモン絞るタイプなのか。
酸味系が好きなら献立に新しいレパートリーを増やそうかな。
酸辣湯とか。
「ほらほら、全員ちゃんと食べてから話しましょうね。……それにしてもスキルの読み取りなんて、本当に凄いわよね。私の真似っことは全然違うわ」
「陽葵さんのスキルも凄いですよ。山吹のスキルは大分体力持っていっちゃうみたいなので一長一短ってやつです」
「回復スキルを使ったとはいえ、内臓へのダメージは不思議なくらいすぐ良くなって……ずっと寝てたのは自分のスキルによる反動だったってことだもんね。……うん。あんなに食べないといけないなら私は無理かも」
陽葵さんの視線の先にはハチの唐揚げ弁当に箸を伸ばそうとする山吹の姿が。
消耗が激しいのは分かったけど、そこまでだったとは……。
「そういえば遥君はスキルをインストールしてもらえたのよね?」
「はい。あ、ちょうど良さそうなのでちょっと使ってみますね」
陽葵さんに説明がてら俺は創造を発動。
ハンディクリーナーを生み出して食べこぼしを吸いとる。
いつでもどこでも便利に掃除ができるとか、改めて使うと嬉しすぎるな。
「凄い。いいなぁ、私もそのスキル欲しいな。真似はできそうだけど、そこまで精密なものは多分だせないから」
「あはは。でも条件があるらしくて、全員にってわけには――」
「安心してくれ。あるぜ、今回読み取った中であんたにインストールできるスキル。というか全員分」
「本当? じゃあお願いしちゃおうかしら?」
「じゃあ綺麗なあんたにはスキルイーターから読みとったスキルを。あ、そんでもってとっておきの、ギリギリ神宮から読み取れたスキルは……並木遥、あんたが条件を達成できそうだぜ」
神宮の名前でその場にいた全員が固唾を飲んだ。
そして、そのスキルを読み取れていたという事実に俺はいつもより速く胸を鼓動させるのだった。
「――ほんじゃ、綺麗なお姉さん……橘さんだったっけ? まずはこれをインストールするぜ……『早着替え(ドレスアップ)』」




