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229話 『今』の

「やっと見つけたって……」



 俺は地面に打ちつけた顔を撫でながらゆっくりと山吹の視線の先を見た。


 この先は確かマップに記載された強力な何かがいるところだったが――



「な、んでこいつがここに!? 今はまだ壁の向こうにいるはずじゃなかったのか?」



 俺の視線の先にあったのは薄気味悪く笑うあの地上の男、神宮の姿だった。


まさかこっちの準備中にひっそりと攻め入ろうとしていたのか?


 まずい。まだ街の人たちの避難は完了していないし、拠点だって未完成。

 あの壁に見える分の敵だけならまだしも、ここにはまだ強力なモンスターがいて……。

 この場所に地上との出入り口が築かれていて、そんなモンスターをゴロゴロ用意している、なんて状況だったら……最悪だ。



「とにかく京極さんに連絡と、ハチたちに援軍の連絡を―― 」

「大丈夫大丈夫!! そんな大事にしなくていいから!!」

「あいつがこの事件の、あの壁を張って、スキルイーターたちを差し向けている人間。更に上で指揮している人間はいるだろうが、実働隊の中ではトップ。そんなのがこんなところにいて大事じゃないわけがないだろ」

「なるほど、こいつってそんなにヤバイ奴なのか……。確かに本物、というか『今』のこいつがこんなところにいたらまずいよな。俺個人としても不都合、てか楽しくねえ」

「分かってくれたか、なら連絡を……って、『今』?」

「ああ。よく見てくれよ、こいつさっきから動いてないだろ?」



 山吹に言われて俺は神宮の顔をまじまじと見た。


 口は開いたまま、身体は揺れることもしなくて、瞬きもない。


 止まったままの雷、白光と同じだ。



「でも、確かにマップには人間として記載されている。神測の対象にもなっている……。神宮は確かにここにいることになっている」

「『今』じゃないだけで偽物ではないから、じゃねえかな?スキルの判定がそうなってんのは」

「山吹、なにか知ってるなら早く教えてくれ。それとも、ここまできて教えたくないとか言わないよな?」

「あはは!言わない言わない!むしろ色々見せようと思ってたところだったくらいだぜ」



 神宮の姿を前に呑気な様子の山吹。


 緊張感が無さすぎて違和感がすごい。



「そんじゃまずはこれの説明をするんだけど……。これ、俺の最新型のスマホ」

「スマ、ホ?」



 山吹は派手なケースに包まれたスマホを得意気に取り出す。


 そして俺は咄嗟に少し前のことを思い出す。



「掃除機の強化……それと同じ事をスマホで?」

「当たりぃ! 流石すぎてつまんねえ!」

「……それでその効果は?」

「いくつかできることがあるんだけどよ、カメラ機能に関しては『過去』の映像を撮れる、具現化できる。写真だけじゃなくて動画まで」

「な!?」

「分かる分かる。凄すぎるよな、俺のスキル。しかもこれ……」



 驚く俺に共感しながら、山吹はさらにスマホをいじる。


 すると途端に雷や神宮がコマ送りで動き出し、その音、声までも再生される。


 まさにそれが現実のことのように。



「こんなことまで出来るんだよ!」

「これを利用して相手を研究できたり、犯罪の手口を暴くことだってできる。確かに、これは凄いよ」

「だろ! そんでもって――」

「ただ先に解決したい疑問が1つ」

「ん?」

「山吹、なんでお前はそんなに嬉しそうに神宮の姿を見ているんだ? 見つけたって……その言葉の意味も教えてくれ。本当にお前は味方、なんだよな?」

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