228話 電撃アスレチック
「――ありゃりゃ。思ったよりも動きにくいな、これ。……にしても、目的のあいつはどこにいるのかなっと」
止まった雷、辺りに散る跳ね返りの雷光と火花。
それらはまるでアスレチックの遊具のように様々な形を模して、道を通りにくくしている。
そしてそんな中をするすると抜けていく山吹が遠くに見えた。
テンションが上がってるのか、ここからでもその独り言はなんとなく聞き取れてしまう。
まぁ元々声はかなり大きい方だけど。
「……それにしても、これを山吹がわざわざ避けてすすんでくってことは……」
山吹はこの止まる雷を制御しているわけではない。
てっきりこの全てが山吹によるものだと思ったけど、何かそうではなさそう。
であればこれを引き起こす存在が別にいて、あんな考え無しに動くのはまずい。
「引き留めに行かないと……。あと、神測もしておくか」
俺は山吹を追うことに決めて、一歩踏み出しながら神測を発動。
まったく、世話を焼かないといけないレベルたけならハチの上かもしれないな。
『――神測。モンスター及び、高レベルな人間の存在を確認。マップ上に情報を記載。また対象の強さを神測。……。レジストされました。対象によるスキル、或いは特殊な条件下であるためと考えられます。これはレベルの上昇によるスキル強化で対応可能です』
「神測がレジストされる、か」
そんな経験は決して多くない。
それだけ相手が、この状況が異質だってことなんだろう。
まさか地上の人間……とはいえ赤クラスの敵ってことはないよな?
「分からんが、できるだけ急がないと……。えっと……確かこっちでいいんだよな?」
雷によって静止された白光が視界を悪くする。
それでもマップを頼りにおそらくはその存在の元に向かっているであろう山吹を追うため、俺はより早く足を急がせる。
すると……。
――ビリ!!
「い゛っ!」
止まっていた雷に足が触れてしまった。
強烈な痛みと痺れが襲い、俺は体勢を崩す。
しかもそのまま足がもつれて前方の白光へダイブ。
そこそこな距離を跳んで俺は地面に顔面から着地した。
『――雷の威力、状態を神測。通常ダメージレベルは10000以上の攻撃力で殴打された場合と同程度。動きを止めつつも威力が維持されたままであり、触れることでのダメージはあり。元よりスキル主はレベルアップにより雷の耐性を獲得しているものの、この威力を到底防げるものではなかったため、それなりのダメージを受けました。これをある程度抑えるための耐性レベルを測り……補完しました。以降ダメージは極小になります』
「それ、もっと早くやってほしかったんだけどな」
神測の効果が残っていたため、俺はさらに強化されることに成功。
ただし最高に格好悪いことに代わりはない。
こんなとこ山吹に見られたら絶対馬鹿にされ……ってここなんか開けてるし、山吹の奴もいるじゃん。
「見られたか……。ああもう最悪――」
「――いた。へへ、やっと正体掴んでやったぜ」
馬鹿にされる覚悟をもって立ち上がり、山吹を見た。
でもその視線は俺なんかには向けられておらず、もっと向こうの、その存在から離れそうもなかった。




