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223話 あーあ

――パンっ!!



 岩を殴ったとは思えないような破裂音と共に、岩壁は俺の拳が触れていない箇所を含む全てが弾けとんだ。


 多分衝撃波で吹っ飛んだんだと思うけど……神測さん、一体この壁をどのくらい柔らかくしたんですか?


 音は風船、感触は豆腐だったんですけど。



「……。ダ、ダンジョンの壁ってそんなに柔らかかったか?てか、この壁って多分他よりもかてえよな? ……流石の俺もドン引きだぜ」

「それそのまま言葉にされたのは初めてだな、流石に……。せめて凄いとか見たことないとかって言ってもらえると助かるんだけど」

「あはは! 悪い悪い! まさか人間がこんなとこまできてるとは思わなくてよ!だって、攻撃スキルなしでこれだなんてさ」

「攻撃スキルじゃないけど、スキル自体は使ってる……って、ここは」

「ふふ……。マップに不可思議にあった空間。焼けた後と立派な家と倉庫。ダンジョンに誰かが住み着いていたってことだな」



 壊れた壁の先にあったのは苺の過去に映っていたあの家と倉庫。


 戦いの跡は消えていないようで、地面は黒く焦げ、倉庫や家も一部焼けてしまっている。


 壁にあった黒い穴はあの時の一撃によってできたもの。

 飛び散った雷撃の跡だったらしい。



 いつかは調べなきゃいけないと思っていたけど、まさかこんな風に見つかるなんて思っていなかった。


 当然神宮はこの場所を知っているだろうし、正面から攻めいってくるだけじゃなくここからも侵入しよう、させよう、と思っていたはずだ。


 2ヶ所から攻められてしまう状況を潰すためにもまず出入り口を塞いでおかないと。


 それと……苺に報告してあげないとな。

 あいつの生まれた場所で両親があんなことになった場所なんだから。


 ……まぁそれはそれとして、ここを探り当てたことで浮かんだ疑問が一つある。



「……。山吹。お前、なんでこの場所を知っていたんだ?まさかお前……」



 俺は無邪気に笑っていた山吹を見つめ、問いかけた。


 この場所を知っている生きている人間なんて限られている。

 それは俺と苺、宮平さんと……神宮くらい。


 最悪の可能性として考えられるのは、山吹が神宮と何かしら接点のある存在、つまり……。



「地上の人間か?」

「……」



 俺の問いに山吹は表情をがらっと変えた。


 こいつ、まさか本当に……。



「悪いけど、その冗談は笑えないぜ。あんなのと俺を一緒にするなんてよ」

「違う、のか? ……すまん、俺が悪かった。だけど、ならなんで?」



 俺が謝ると山吹は軽く天を仰ぎ息を吐いた。


 そして俺の目を見ながら、深刻な表情を見せる。


 もしかして、苺のように神宮の被害に……。



「だってよう、喧嘩で決めたわけでもなんでもねえのに、ずっと、一方的にマウントとられてるなんてかつくだろ!」

「え?」

「だから俺はあいつらに一泡吹かせたくて痕跡探し。まぁあんまり他人を巻き込むのもなってのと、それで成果を上げりゃみんな大喜びのサプライズ!ってなわけで、1階層にそれっぽい反応がありそうだったからよ、おいおいスキル使ってそれを見つけようとしてたってわけだが……。あーあ。全部話しちまった」



 なんてことはなかった。

 山吹はとことんサプライズ好きなやんちゃ坊主らしい。


 ただ、それを聞いてまた1つ疑問が湧く。



「理由は分かった。でも痕跡を見つけて、それでどうするつもりなんだよ」

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