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218話 その人の条件

「――ぎきゅあっ!」



 現れたのはベアハグ、名前通り絞め技を使う熊型のモンスター。


 通常の個体は大体3m、その体毛を黒く偏食させて黒い岩のように振る舞って探索者を騙し、襲う。


 本来の狩猟方法が待ちのスタイルだからこそ、こうやって出てくるのはかなり珍しい。


 おそらく住みかを荒らされるわけにはいかないと、威嚇をするためだけに出てきたのだろう。



「苺、こいつなんて言ってるか分かるか?」

「出ていってくれ……さもなくば食っちまうぞ!だって」

「なるほど。じゃあ契約がどうとか、俺たちにビビってるとかそんなのはないのか」

「うん。あくまで戦うのは面倒なだけなのかも。ほら、このこの子のお腹だるんだるん 」

「あんまり、働かない奴を仲間にしてもしょうがない気はするけど……まぁいいか。こいつが契約したくなるくらいの圧倒的力を見せてやる。ただ勿論、脅迫じゃない。あくまで自分からそうしたくなるように仕向けてやるだけ……『超身体強化』。重ねて重ねて重ねて……」



 苺の翻訳を聞いて俺は無駄に強化を重ねる。


 レベルが上がったからなのか、それとも酔っている状態に慣れがあるのかこれくらいなら全くつらくない。


 むしろ調子が上がって、口角も勝手に上がる。



 だけど俺たち以外の人、動けずにいる探索者2人はそうじゃない。

 漏れるのは笑いどころか、涙や鼻水。


 自分が思っている以上に圧を周囲に撒き散らしているようだ。


 別に恐怖を与えたいわけじゃなかったんだけどな……。



「……ふっ!」



 そんな2人を無視して力を解放。

 強く握った拳をベアハグの真横で思い切り振り下ろす。


 直接地面を殴ったわけではないけど、地面が軽く凹み、ベアハグの体毛は大きく揺れた。



「へぇ……。スキルなしでこれか。でも竜が大人しく言うことを聞いてるんだから、これくらいは当たり前ってか」

「……がう」



 俺の一撃をなぜか楽しそうに見る男性。


 それとは対照的にベアハグは大きい身体からは想像がつかないほど可愛らしい声で鳴いた。


 そしてその両掌を天に向け、膝をつく。



「戦意がないってときのポーズ。この子に敵意はない」

「わかった、ありがとう苺。……とまぁこんな感じでモンスターと接してもらって、あとは契約をして欲しいんだけど……ご協力お願いできるかな?」

「「……」」



 黙ったままの探索者2人に声をかける。


 でも返事がない。すごく気まずい。



「えぇっと……」

「こんな感じって……。はは、簡単に言ってくれるわね。まさか、こんなに強いなんて……。申し訳ないけどここまでのこと私にはできないわ」

「い、今のは遥君が極端にやって見せただけだから! なにもここまで怯えさせる必要もないし、こっちで選んだモンスターと接してもらうことになると思うから、その場合戦わなくても良かったりもするの!ね!そうでしょ遥君!」

「え、あ、はい」

「じゃあ、これだけの人のサポートがあるなら。それでその契約って?」



 先に反応したのは意外にも態度の悪かった女性の探索者。

 陽葵さんのフォローも相まって協力してくれるみたいだ。


 もう一人の男の人もしっかり耳を傾けているし……取りあえずこの2人は問題なさそう。

 なんならあともこの2人中心に行動してもらえると助かるけど……そこは探索者協会も含めて話し合いだな。



「――それで、血を飲ませてあげれば契約完了」

「本当に簡単ね」

「これでモンスターが仲間に……」

「個体によっては群れの長だったりもするから、それを利用して道の安全確保と整備をしたい。取りあえず遥と私で似たような子探すからどんどんお願い。あ、帰りたくなったらみやに一声かけて。連絡とか諸々面倒なのはみやが担当だから」

「おいおいおいおい。勝手に決めないでくれって……。でもまあ、応援が来るまでは仕方ないか」



 苺による契約のレクチャーで作戦一発目の仲間確保に成功。


 少し深めの階層はハチや陽葵さんに戦闘面も手伝ってもらうとして……今日までに10階層くらいまで手を広げておきた――



「仕方ない。ちょっと面倒だが、俺もモンスターとバンバン契約してやってもいいぜ。ただし、さっき言った条件、それを聞いてくれや」



 レクチャーを渋い顔で見ていたヤンキーのような探索者がやれやれといった様子で俺の肩を叩いてきた。


 そういえばこの人だけ別の条件が……って言ってたっけ。



「その条件を全部飲めるかは分かりませんけどね」

「そっか、でも大丈夫だと思うぜ。だって俺が協力する条件は……1階層での居住とその全域の管理。当日1番ヤバイ場所を請け負ってやるって言ってるんだからよ」

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