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216話 しょうもないぜ

『お、俺はこの後京極さんと住民たちの移動先導日について、あとはダンジョン内に建てる簡易住居についてとかとか話すことがあるから』

『みなさんなら問題ないと思いますけど、くれぐれも注意してくださいね!一部の探索者や住民がダンジョン内で土地を占有しようとしているなんて噂も聞きますから』



 部屋を出ようとする俺たちの去り際、2人が慌てた様子で声をかけてくれた。


 俺はそれを聞いて笑って顔を縦に振ったのだが……。



「――おい! ここは俺の土地だぞ! ほら! ここに線が引いてあんのが見えないのか!」

「そんな線こうすれば消えるでしょ! 意味ないのよ!ダンジョンでそんなことは!どうしてもこっちまで自分の土地を広げたいなら戦ったっていいわよ!」

「なんだと……。ちっ痛い目見ても知らねえぞ!」



「――アイシクルバレット」

「――拳閃」



 男性探索者と女性探索者の怪我どころか死んだっておかしくないような容赦のない魔法とスキルのぶつかり合い。


 他にも数人が言い合いをしていたり、勝手に資材を運んで建築に取り掛かっていた。


 現在ダンジョンの3階層。


 当然全てではないけれどギリギリ道の舗装が進んでいる階層で、あらかたダンジョン内に避難するならここが最奥、最も安全で人間が暮らしやすい場所だと判断したのだろう。


 まだ本格的な避難指示は出していないものの、探索者協会で話題に上がったことをきっかけに早め早めに動き出しているのだろう。

 賢く思うかもしれないけど、ちらほら戦いができる感じに見えない人もいて、自分の住まいを探すよりも先にモンスター、ないしは魔法やスキルに巻き込まれてしまうんじゃないかと心配になってしまう。



 大量にモンスターを仲間にする作業はもちろん、こういった人たちへの声かけもしてかないとダメそうだな。


 今怪我するのも良くないし、後からもっと奥に拠点を構えられるとか言い出したらこっちにヘイトが向きそうだし……面倒だなとは思うけど。



「あの、すみません――」

「あんたらさぁ、こんなしょうもない場所に、しょうもない家を、しょうもない争いまでしてさぁ。到底利口な考え方とは思えないぜ」



 俺が2人の攻撃の間に割って入ろうとしたとき、ハチでも陽葵さんでも、とにかく俺の見知った顔じゃない人物が俺よりも先に2人に声をかけ、そして……。




「「黙――」」

「それにこいつらの前でやんちゃすんのはおすすめできねえ。少し大人しくしてな」



――パン。



 その人物が両手を叩くと、魔法陣から一定間隔で発射されていた氷魔法は簡単に弾け、しかも2人は金縛りにでもあったかのように急に動かなくなってしまったのだ。



「……。神測――」

「やめたほうがいいです。誰だかは分からないけど、この魔法は敵とみなしたものに干渉するようですから。多分あなたでも、無効化は不可能」

「赤……」

「ええ。力、というかレベルは大したことないかもしれないけどスキルは相当なものよ、遥様」



 その人物によるスキルがあまりにも強力で、つい神測を使ってその効果を確認しようとしたが、俺よりも先になにかを仕掛けていたのか、赤とハチがその手を痙攣させつつ、俺に警告してくれた。


 この2人にここまで言わせるなんて……。

 俺たち以外にもまたこんな探索者がいたのか。

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