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20話 おやすみ

「いっ、ぁぁぁぁ……。全、員? 一撃? あんひゃ、離れたのもいりゅ、のに……」

「俺のスキルは普通の広範囲魔法とは違って、対象を選択して、同時に12発の斬撃を生み出せる。まぁ斬撃を飛来させているわけじゃないから、勿論その距離に制限はあるが……」

「12……。相性、最悪ね」


 剣を振り下ろし切ると、竜たちの首は刎ね飛んだ。

 俺が直接持っていた剣は何とか急所を外したものの、それでも角竜に振り分けられる際、余った数撃がオロチ本体の首を完全に断ち切った。

 そして水の剣はオロチ本体からの助けをなくし、ゆっくりと消える。


「勝った……。勝った、勝った勝った勝った勝った勝った!! 俺が、たった1人で!! やった――」


 こふ……。


「え?」


 歓喜に身を震わせ、拳を強く握りしめた。

 しかし、そんな感情とは反対に身体は悲鳴を上げた。


 血。のどの奥から咳と共に撒かれた血。

 動揺をする暇もなく、それは2回3回と続き、ついには蛇口をひねった時のように溢れ出した。


 寒気が全身を襲い、俺はゆっくりと地面に落ちた。

 眠い。疲労しているから、ってわけじゃない。この眠さは……。


「折角強くなったのになぁ。その、首、持って帰れば……。あいつら、俺を馬鹿にした奴ら全員見返してやれる、のに……。モンスター共が……。せめて死ぬなら、誰かの温もりの中で死にたかった。父さん、母さん、陽葵さん……。あれ? もう目も――」


 霞んでゆく視界に映るモンスターたち。

 俺を、俺たちを食おうって腹積もりのモンスターたち。


 水風船が破裂したかのように、パンパンに膨らんだ後血で地面を汚すモンスター、たち?


「ご主人様。この私すら倒してしまう人間最強のご主人様。改めて私はあなたに尽くす。だから最初の御命令……了解したわ」


 この声、間違いなくオロチ本体の声。

 顔に触れる胸は、水を扱うモンスターとは思えないほど暖かい。

 そうか、そういえば1匹殺し損ねた奴がいたな……。


『神測。状態、生命力残り僅か。死亡まで137秒。奴隷サーバントとの同調シンクロ率計測……』


「俺はあと137秒で死ぬらしい。そんな長い間、痛い思いはしたくない。なぁ、お前は俺に負けて、俺の奴隷サーバントになったんだろ?」

「そうよ……。いいえ、その話し言葉は適切じゃないわね。そうですわ」

「はは。敬語とかタメ口とかそんなのはどうでもいいさ。ただ、最後にもう1つお願いしてもいいか?」

「なに?」

「痛みから解放してくれ、お前の手で」

「了解しました。……違うわね。分かったわ、ご主人様」


 オロチ本体が生み出したであろう水の剣が身体に刺さる。

 何故だか痛みはない。

 人肌……。とはちょっと違うが、慕ってくれるやつに看取ってもらえるなんて、ずっと馬鹿にされてた俺にとってこれ以上ない死に際かもな。


同調シンクロ率、73パーセント。ユニークスキルを――』


「おやすみ。ご主人様」


 『神測』のアナウンスがオロチ本体の声で遮られると、俺はゆっくりと目を閉じたのだった。

お読みいただきありがとうございます。

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