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198話【苺視点】びりり

「――すみません、遅くなりました」

「いや、こっちこそお休み中に連絡しちゃってごめんね。ただ、動くのは早い方がいいと思ってさ」



 ダンジョンを出た蒼社が向かった先、神宮のいた場所は更生施設の近くにある寂れた一軒家。


 この付近は更生施設にいる人たちの中でも比較的まともな人たちが探索者や施設長の監視の下出歩くことがある。

 そのせいかこの辺りに住まう人は少なくて、出店している企業もほとんどない。


 ただ探索者協会に所属するいかつい武闘派メンバーが更生施設の様子を定期的に見に来ることもあってか、意外に犯罪も少ない。



 一番物騒で一番安全な地区として有名、だからこそ犯罪者たちの根城になったってことかな?



 今は監視カメラの台数が増えたり、駐在する探索者とかも充実しているからそんな心配さえないんだけど……この時代はそうじゃなかったみたい。



「それで、やつらはこの中に?」

「ああ。人数は5人。こっちでリストアップしているメンバー全員が帰ってきているのはもう確認済み」

「そうですか。にしても、今まで全然見つからなかったのに……よく見つけましたね」

「……。奴らが最近活発に活動していたのは知ってただろ? 被害は多かったけど、それ以上に痕跡も多かったのさ」

「街の人たちを囮にしたみたいでちょっと申し訳なかったですね……。もっと早く俺がここを見つけていれば」

「申し訳ない、か……」

「神宮さん?」

「いや、君の捜索は悪くなかったと思う。あいつらは場所を頻繁に変えてたみたいだし……感もよさそうだ。ほら、こっちに気付いてないはずなのに様子を見に来た」



 家の扉から恐る恐る男が顔を出した。


 明らかに警戒をしているその男はかなりのでぶっちょ。

 犯罪で手に入れたお金で好きなだけ食べてそう。



「どうします? 一気に突入しますか?」

「そうだね。でも気配を察知に長けたスキルを持った人間がいるからそれに注意しないと。んー、まずはスキルイーターで包囲かな」

「了解です。おい、頼む」

「お、お……」



 蒼社が命令するとスキルイーターがスキルを発動。


 すると家の周りが陽炎のようにゆらゆらと歪んで、数匹のスキルイーターが現れた。

 この何年間でワープスキルの効果も高まってるみたい。


 でもその代償は大きいみたいでスキルを使ったスキルイーターはその場に倒れちゃった。



「くそっ!! こいつら!!」

「おいどうした」

「ば、バレました!! 家の周りをモ、モンスターが!!」

「……大丈夫だ、落ち着け――」



 ――バリ。



 慌てて家の中に戻ろうとする男の肩をポン、とその奥にいた男が叩いたのが見えた。


 そして次の瞬間家の周りに電気が走った。



 それをもろに食らったスキルーターたちは動きを止め、バチバチと電気を纏ってしまった。

 

 痺れトラップ。ダメージは大したことなさそうだけど、一定時間動きを止めらるのはかなり強力。

 こんなものが簡単に、しかもこれだけの範囲で設置できるのなら確かにレアスキルって扱いになるかも。



「まずったな。これじゃあ包囲した意味がない。正面からぞろぞろ出てくる前に俺たちも突っ込みましょう」

「そうだね、ってもう一人逃げ出してるな……」

「あれは俺が!!」

「任せたよ。その間に中に入ってるから」

「了解です」



 神宮と蒼社は二手に分かれて動き出し、映像は蒼社をフォーカス。


 走って逃げる男を追う様子が鮮明になる。


 追うのはさっきの太っちょとは別の男で、結構速い。



「はぁはぁはぁ……」

「捕まえたぞ。悪いけど、この街の人間程度なら俺の方がまだ強い」

「くっ。探索者か? それとも……地上、ってか上の人間か?」

「お前……なんでそれを」

「さぁな。でも突然思い出して……。だから……俺たちは探った。いろんな道を。そんで俺たちだけの、なににも縛られない世界を作るって決めたんだ。そのための準備資金も、当面の資源も……もうある」

「そうか。でも残念だったな。その努力は今日泡となって消える」

「お前を止められれば、まだ可能性はある。だって、俺たちにとってはもう一人の男よりもお前の方が明らかに敵」

「なにを言ってるかよくわからないが……とにかく黙れ」



 蒼社は男をスキルイーターに食わすためなのか、武器ではなく拳で男に攻撃を仕掛けた。


 慌てて男は顔の前に両手を構えたが、それにしっかりと反応した蒼社はガードの真下に拳を潜らせる。



「罠師:蓄雷――」



 ――ごきっ。



 骨が砕けるような音が男の言葉を遮った。

 そして男は気絶した。



「……なにかスキルを発動しようとした? ……でも、なんともなさそう、か。なら……」



 蒼社は急いで神宮の後を追った。


 その顔は戦いに勝った喜びに満ちてはいなくて……それ以上に不安でいっぱいだった。


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