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196話【苺視点】ありがとう

「――おお……モ、モンスターと人間の間でも子供が生まれるんだな。しかもすごく可愛いじゃないか……」

「ふふ、こんな時まであなたらしいんだから。でもそうね……これが生命(いのち)、人間もモンスターも、色も種族も階級も、言葉だって関係なく尊いの。ほら、手を出して」



 映像が再び通常の速度に戻った。


 そして、さっきまでとは明らかに仲が深まっている2人は赤ちゃんの顔を覗き込み、その手にそっと触れようとする。



「んぅ……あっ!」



 それに応えてあげようとしたのか、赤ちゃんはたどたどしく腕を伸ばして2人の指を掴まえた。


 それまでずっと震えていた蒼社の手は余計に震え、丁寧に、壊れないよう慎重になっていることが分かる。



「小、さい」

「うん。でもとっても温かいでしょ?」

「ああ。頑張って生きてる。こんな、これだけで嬉しいなんて思わなかった。……ありがとう。ありがとう!」



 蒼社は赤ちゃんと青色のメスオーガの手を優しく包み込んで頭を下げると、その目から涙を溢した。



「ふふ、大袈裟なんだから」

「そんなことない。『(あい)』とこの子の頑張りはどれだけ感謝してもしきれないよ」

「……あなた、あの時私を見つけてくれてありがとう。私ずっと仲間とまともに話せなくて、虐められて……でも、人と触れあって変われた。感謝するのは私の方」



 青色のメスオーガ、藍と呼ばれる母親のオーガと蒼社の視線が合う。


 無言で数秒見つめ合うと藍がゆっくり目を閉じ、蒼社はそれに応える。



 私がちゃんと見れなかった数年で2人の関係は想像よりも深まっていたらしい。



 少し恥ずかしいけど、なんだか嬉しい。



「ふふ、それでこの子の名前はどうしよう」

「そうだなぁ……。俺と藍の子供だから青、葵、あお――」

「ねぇ、それもいいと思うんだけどこの子にはもっと明るい色が似合うと思わない?ほら、ほっぺたなんか赤くて可愛いし、私と違って肌も青色じゃないんだもの。それにどこかのモンスター研究でくらーくなりがちな人に似ないようにね」

「それって俺のこと?」

「どうでしょう?」



 悪戯に微笑みかける藍。

 この家族は旦那さんが大変になるかも。



「ということで私提案があります!」

「聞いてきたけど……なんだ、つけたい名前あるんじゃん」

「ふふふ、それでも一応夫の顔を立てて聞いてあげるのが妻ってもんなの」

「そうなの?」

「そう! っということで提案は私が一番好きで一番憧れて欲しかった色を持った……ドゥルルルルルルルル」

「ド、ドラムロールなんていつ覚えたんだよ……。それにそのヒントでもう分かったから。いいんじゃないか、その名前」

「もう! 折角の発表邪魔しないでよ! 本当にしょうがない人! でもでもこれは本人がいいって言わないと決定じゃないのです! だから答え合わせついでに一緒に名前を呼んであげて」

「……分かった」

「じゃあいくよ、せーの――」




「「苺」」




 これ、私の名前……。

 ううん、でもまだそうと決まったわけじゃ――




「あう? ……あぅ!」




 2人の呼んだ名前にまだ驚いて、疑っていたのに……赤ちゃんだった頃の私はそんな自分自身に、私が苺だよって伝えてくれているみたいに大きな声で返事をした。

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