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195話【苺視点】幼い泣き声

「――着いたぞ」

「うわぁ……。ここ、ダンジョンなんですよね?モンスターの気配……はあるけど殺気はない。それにこの建物は……」

「事前にお偉いさんが用意してくれたんだ。だからここには俺とスキルイーター以外出入りすることは……」



「――おかえり! レアスキルの情報が入って……って、どなたさん?」



 2人が1階層の拠点に到着すると、住まいからにこにこと笑顔を振り撒いて神宮が現れた。


 その視線はすかさず青色のメスオーガに向けられ、緊張感が当たりを包む。



「今日からここで暮らすモンスターです。レアスキルを持っているからその研究も兼ねて」

「ふぅん。それは興味深いね。あ、そういえば探索者協会に救難申請があったらしくて、凶悪なオーガが出ただのなんだのって……。まさか、関係あるとか言わないよね?だって探索者は一般人と違ってスキルによって感が鋭かったり、抵抗力が強かったりして――」

「接触は危険。バレるリスクを考えろってことですよね」

「その通り!分かっているならいいんだ。分かっているならね」



 笑いながら溢れた殺気。

 それに気付いた青色のメスオーガはその肩を震わせた。



「あはは! ごめんごめん! 脅すつもりはなかったんだ! うん。モンスターとは思えないほど利口で大人しい。これは期待できるねえ。今までのへぼへぼスキル収集がチャラになりそうじゃないか」

「それはよかった。それよりレアスキルの情報って?」

「ああ。実は探索者協会調べによるとしばらく前に『交換』と『罠師』ってスキルを持った探索者、犯罪に手を染めた疑惑のあるやつらがいたらしくてね。どっちもレアなスキルで……ここから這い出る可能性を含むものだから、それの取得、奪取を依頼したいんだ」

「なるほど。でそいつらってどこに?」

「それが分かれば苦労しないさ。ま、急ぎじゃないからのんびりと探してくれ。じゃ、また情報持ってくるからせっせと励んでくれたまえ!」

「りよーかい」

「可愛いオーガの君も……」



 神宮は蒼社の横を通ったかと思えば、いつの間にか青色のメスオーガの真横に。


 そして金色に光る髪を優しく撫でた。



「ヤ、メテ……」

「……なんのスキルもなしに互いに言葉が分かった、か。これは楽しみだ!また会えたなら、竜に匹敵するモンスターになってたりなんてね。会えればだけど」



 そう言うと神宮はそそくさとその場から去っていった。


 軽い雰囲気が逆に怖い。



「……大丈夫か?」

「あれはなんとも思っていない。殺すことを。モンスターはもちろん、同じである人間も。というか、むしろ……。あの、あなたは違いますよね?」



 震えた声で青色のメスオーガは問い掛けた。


 そんなひどく怯える様子に蒼社は困ったように考えた込むとようやく口を開く。



「……。違うさ。だから、仕方ないから、人間は殺さない。約束する。まぁ仕事上こいつらに少し攻撃させはするけど。……それで安心か?」

「……」

「と、当然あんたにも手は出さない!だ、だから、その……黙られらと困る」

「……ふ、ふふ。あなた、変な人間ですね。こんな人、久しぶりに見ました」

「あんたに変とか言われたくないんだけどな……。はぁ。苦手だ、こういうの。もう飯にするから中に入ってくれ」

「はい!よろしくお願いします」



 そうして2人が家に入る。


 すると、そこから映像は早送りされ、なんてことのない日常が延々と流れた。



 そして……。



 ――オギャア!!



 青色のメスオーガの腕の中で幼い泣き声が響いた。

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